原題と翻案原作 : 映画《スティング》は1973年公開。
原題 スティング: sting の意味は、本来は「チクリと痛烈な一刺し」「ガツンと一発お見舞いすること」だが、ここでは――つまり、コンフィデンス・ビズネスの世界用語としては――「詐欺師が巧妙に相手を騙して大きな稼ぎを達成すること」「大きな詐欺の成功」ということらしい。
物語のアイディア(原案)は、David Maurer, The Big Con : The Story of the Confidence Man, 1940 (デイヴィッド・モーラー著『でっかい詐欺――騙し屋の物語』1940年刊)。
見どころ:
登場人物たちの騙し合いの物語の世界に、いつしか観客は引きずり込まれてしまいます。そして、最後の最後に、主人公たちの巧妙な「騙しの手口」にひっかかってしまうのです。
騙しの罠の網は、ボスに対してだけでなく、見る側の私たちに対しても、二重三重に張られているようです。
こんなに洒落た映画作品には、めったにお目にかかれません。制作スタッフに心からの賛辞を送ります。
それでは、ご覧になる皆さん、プロットとトラップにくれぐれも気をつけてください。
物語は、古典的で舞台劇風の映像で展開していきます。その狙いは、登場人物たちの言葉のやり取り(会話)や駆け引き、表情・心理描写により重点を置くことにありそうです。
フッカーとルーサーは、小さな地方都市の片隅で稼ぐ小物イカサマ師コンビ。ある日、賭博組織の下っ端から大金を奪いとった。ところがその下っ端は、有力な黒幕ボスが牛耳る賭博シンディケイトの金の運び屋だった。
そのボスは組織の威信を守るため、殺し屋を使ってイカサマ師仲間を執拗に追跡させ、仲間の1人、ルーサーを殺させた。フッカーの命も狙っていた。
ルーサーの相棒フッカーは、巨大な組織とボスを敵に回して、ルーサーの仇討ちを誓う。そして、合州国屈指の詐欺師、ゴンドーフと手を組んで、くだんのボスから巨額の金を巻き上げる危険な作戦に挑むことになった。
ゴンドーフの企てを知った一流の騙し屋たちが、アメリカ中から集まってきた。そして、圧倒的な力をもつボスをどうやって嵌めて大金を奪いとるか、しかも、ボスが騙されたと気がつかないように騙すかという作戦を練り上げていく。
電信競馬でロネガンを罠にはめて50万ドルを奪う作戦はいよいよクライマクスへ。
だが、作戦の開始当初から、フッカーは2つの方向から追いつめられていた。1つは、ロネガンの放った殺し屋。ロネガンは見せしめのため、一流の殺し屋を雇って執拗にフッカーの命を狙い続けていた。もう1つは、悪徳刑事スナイダー。
彼らの探索の手は、間近に迫っていた。
殺し屋の手がフッカーに迫ってきても、フッカーは逃げ出すわけにはいかなかった。ボスを騙す作戦で重要な役割を担っていたからだ。
コンゲイムの進行と同時に、暗殺者とフッカーとの息詰まる対決が迫っていた。
最後にゴンドーフの仲間とフッカーが組んだ「華麗なだましのテクニック」が炸裂する。
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