ロネガンを嵌める仕掛けが準備されていくのと並行して、フッカーには二重の危機が迫っていた。
その1つめが、悪徳刑事スナイダー。なにしろ、スナイダーは偽札をつかまされたのだ。
ある日、彼は通りでフッカーを見つけると、執拗に追い回した。フッカーは鉄道の駅に逃げ込んで、プラットフォームから屋根に駆け上がり、そこから街路に飛び降りて、辛くも窮地を脱した。
もう1つが、ロネガンが差し向けた殺し屋だった。
いま、ロネガンから指示を受けている殺し屋はサリーノ。だが、最初に依頼された殺し屋は、ロネガンの「発注」がキャンセルされても、おのれの面子のためにいまでもフッカーを追跡していた。
フッカーは、2人の殺し屋にねらわれているのだ。
その状況をつかんだゴンドーフは、フッカーを窮地から救う手立てをとることにした。
さて、その頃シカゴでは、FBIの特別捜査官ポークが指揮するティームが、連邦犯罪の容疑者としてゴンドーフ追捕をめざして密かに動いていた。彼らにとって、スナイダー刑事がゴンドーフの相棒フッカーの周囲をウロチョロするのは、すこぶる目障りだった。
ポーク捜査官としては、現在進行中の「電信競馬詐欺」が順調に進んだ方が、証拠を押さえて現行犯逮捕にもち込めるので、望ましかった。
ところが、スナイダーがフッカーを追いつめれば、ゴンドーフ逮捕作戦が頓挫してしまう。そこで、スナイダーを抑え込む必要があった。
土砂降りの雨の日、ポークの部下たちは、カフェで食事をしていたスナイダーをつかまえて、捜査陣の作戦拠点(廃工場)に連行した。ポークは作戦の趣旨をスナイダーに説明して、ゴンドーフ捕獲作戦への協力を強要した。そして、フッカーを逮捕せずに泳がせることを認めさせた。
泳がせるといっても、フッカーをFBIの手駒として利用することにした。そのためには、フッカーを完全にFBIのコントロール下に置かなければならない。
こうして、フッカーはスナイダーとFBIのエイジェントによって捕らえられて、ポ−ク捜査官の前に連行された。そこで、従わないとルーサーの未亡人を逮捕・投獄すると脅されて、ゴンドーフ逮捕への協力を約束させられてしまう。