その朝も、一見したところ、平穏に始まったかに見えた。
けれども、徐々にロボットの挙動不審が目立ってきた。
コントロールセンターでは、現在の客が帰ったのちに、デロスのロボットの作動を一斉に止めて、制御プログラムとメカニズムの全面的なオーヴァーホールを実行することにした。そして、事故や事件が発生しそうなら、今日の営業中にも、緊急避難的に個々のロボットを停止させる方針を決めた。
ところが、このような緊急即応体制を整えようとしたとき、中央制御用のスーパーコンピュータが「暴走」を始めた。
コントロールセンターの各室の扉の開閉装置を勝手に制圧して、係員や管理要員を部屋ごとに分断し、閉じ込めてしまった。そのうえ、空気調整循環装置、換気・通気装置を操作して、彼らを窒息死させてしまった。
人が死に絶えたコントロールセンター。
3つの世界では、それまでは人に戦いを挑んでやっつけられていたロボットたちの復讐=人狩りが始まった。
人との戦いの機能を持たないロボットたちは、描かれていない。が、最終的に人の形をしたものは、人もロボットも動かなくなったところを見ると、壊れてしまったのだろう。人に戦いを挑むロボットだけが、生き残ったわけだ。
結局、デロスのロボット制御システムはウィルスに冒され、あるいはコンピュータ自身の暴走によって、人を攻撃し破壊する機能のプログラムだけが「生き残った」ことになる。
「西部の世界」では、ピーターとジョンの前に、あの黒ずくめのガンマン・ロボットが現れた。ガンマンは、2人にまたもやガンファイトを挑んできた。
これもまた、筋書きがあらかじめ決められ、「人の勝ち」が決まっていると思い込んだジョンは、ガンマンに立ち向かったが、手もなく撃ち殺されてしまった。人の体温を感知して銃弾の発射を封じ込める制御メカニズムは解除されているようだ。
ピーターは逃げ出した。
一方、「中世の世界」でも異常な事態が発生していた。
冒険家の貴族に扮し、妻との逢瀬を楽しんでいた初老の夫。妻の話では、あの黒騎士がまたもや、この貴族に対して決闘を挑んできたようだ。ただし、あの黒騎士のロボットは、右半分の視力、右半分の運動機能が麻痺しがちなプログラムになっているので、右を攻撃すれば勝てるはずだった。
宮殿の内部で、この貴族は黒騎士と遭遇した。当然ながら、剣を交えて激しい決闘になった。だが、黒騎士は右側への攻撃に素早く反応し、その右手、右半身の攻撃能力は完全だった。
黒騎士の強烈な攻撃を受けて、初老の貴族は斬り立てられていく。ついに追い詰められ、剣で串刺しになって斃死した。
この世界では、訪問客=人間はすべて死に絶えた。
そして、やがてほとんどのロボットが停止した。
デロスのアリーナはいずこも「死体」だらけになった。
同じような事態は「ローマの世界」でも起きていた。