『刑事フランク・リーヴァ』は、2003年から翌年にかけてフランスで放映されたテレヴィ・ドラマ。パリから組織犯罪を駆逐しようとする警察とマフィアとの対決を描く物語で、エスプリが利いたフランス風の刑事・警察ドラマ。主演はアラン・ドゥロン。 原題は Frank Riva 。
フランク・リーヴァとは主人公の名前。ただし、本名ではない。フランク(ゲルマン風)もリーヴァ(イタリア風)もともにフランス風ではない名前だ。主人公にこんな名前をつけたのは、背景にある事情を暗示するためか、それともアイロニーを込めたのだろうか。
ところで映像では、個人対個人、組織体組織の対決や暴力を描き出すスタイルは痛烈な皮肉が利いていて、まさに「これぞフランス風!」ということになる。
警察の側でもマフィアの側でも、登場人物たちは、ひたすらおのれの権力欲求に突き動かされて行動し、逃走し合う。あたかも欲と衝動に駆られた闘いこそがおのれの個性やアイデンティティの表現でもあるかのように。
マフィアを描いた映画だが、フランシス・コッポラの『ゴッドファーザー』シリーズでは、組織や個人のあいだの闘争の背景にある家門や社会の歴史が鮮やかに描かれていたのに対して、この作品では〈今を生きる個=エゴ〉が物語の核心に据えられている。
26年前(1970年代後半)、パリ警視庁の3人の敏腕捜査官がパリのマフィア組織を駆逐しようと奮闘していた。マフィア組織を壊滅寸前まで追い詰めたのち、3人は道を分かった。
犯罪組織に潜入していたフランク・リーヴァは、マフィア壊滅作戦の途中で窮地に追い込まれ、マフィア残党の報復を恐れて、海外に移住した。
フランクの弟、ルネ・レゾーニは警視庁の組織内で昇進を続けて刑事部長におさまった。
マフィア壊滅作戦を練り上げた参謀でリーダー格のグザビエー・アンジェは、切れ者だったので、今では警視総監になった。
ところが、先頃、ルネが殺害され、マフィア組織の再建と拡大が進む恐れが出たことから、フランクはパリに呼び戻された。
フランクは、アンジェの指示で警視庁に復帰して捜査を開始する。そのとたんに、今では金融コンツェルンになっているマフィア組織の内部で抗争が始まり、先代のボスが殺害された。そしてロッジャ・ファミリーは、フランクの復帰を待ち構えて大がかりな謀略を用意していた。
フランクは捜査班の若い刑事たちとの世代ギャップを感じながら、昔のように単独行で捜査に動こうとする。それは、26年前の苦悩と苦い経験の記憶を問い直す試練となった。
やがてフランクは、捜査班を指揮する美貌の警視(エルゾーグ署長)と愛し合うようになる。エルゾーグと協力しながら捜査を進めるうちに、マフィアと警視庁組織との癒着と腐敗、謀略の構図が浮かび上がってきた。そして、謀略の背後に潜んでいたのは意外な人物だった。
フランクが直面した恐るべき謀略は、過去のマフィア壊滅作戦が発端となっていた。暴力には暴力、陰謀には陰謀で対峙した警察側の戦略が、思わぬ奇怪な権力構造を生み出していたのだ。
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