1939年2月14日、ナチス(国民社会主義ドイツ労働者党)が支配するドイツ帝国、ハンブルクのブローム=フォス造船廠で、最新鋭の戦艦ビスマルクの進水式が開催された。海軍司令部の将官はもとより、アドルフ・ヒトラーをはじめとする総参謀本部の首脳陣が列席していた。
巨大な戦艦の船体が乾式ドックから水上に滑り降りていった。
この段階では、船の本体と内部の船倉の基本構造だけができ上がっていて、司令塔や艦橋(ブリッジ)、煙突、砲塔などは設置されていない。それでも巨大な船体は、周囲を圧倒していた。
ど派手なイヴェントで集団熱狂の雰囲気を演出するのを何より好む、ヒトラーとナチスが、いかにも企画しそうな壮大な式典だった。それは、「不沈艦」の呼び名にふさわしい巨大戦艦ビスマルクの輝かしい未来を約束しているかに見えた。ブリテン帝国王立海軍の前に劣勢を強いられてきたドイツ海軍の巻き返しを可能にするかに見えた。
翌年8月24日、完成して装備と艤装を終えた戦艦ビスマルクは、リンデマンを艦長として軍務に就役した。
ビスマルクに関する情報は、公式のドイツの報道や放送をつうじて、また各地の工作員や諜報員をつうじて、ロンドンの王立海軍総司令部に集積されていった。巨大で高性能、恐るべき破壊力を備えた、この戦艦の情報は、海軍首脳にバルト海から北海、そして北大西洋と地中海での艦隊の配置、戦略と戦術の大幅な見直しを迫っていた。
これが、映画の冒頭で示されるブリテンをめぐる状況だ。
戦艦ビスマルクは、その大きさや破壊力もさることながら、船体のデザインが大変美しい。ミニチュアスケイル模型では、非常に高い人気を誇っているという。私も、かなり以前にタミヤのプラモデルをつくったことがある。今は手許にないが。
日本海軍の戦艦大和・武蔵と同じくらいに、それ自体としては洗練されたデザインで、模型づくりには格好の兵器かもしれない。
ところで、タミヤのミリタリー模型には、必ず実物が開発されたり、実戦配備された経緯、兵器の設計や性能、戦史上の意味などについて、すごく詳しい解説資料が添付されている。
あれはすごい。第一級の兵器ならびに軍事史上の解説と評価できると思う。おそらく、それ自体の情報については、防衛大学校の教官も顔色を失うのではないか。いや、協力関係にあるのかも。
戦艦ビスマルクの建造や就役の経緯、海戦の状況については、この戦艦の模型に添付された解説資料に詳しく載っているはずだ。
あるいは、Wikipediaの「戦艦ビスマルク」の項に詳しく解説が載っている(日本語版よりも、英語版の方がはるかに詳しい)。この記事では食い足りないという読者には、そちらを参照することを勧める。