刑事ドラマ『新参者』と
   『刑事定年』 目次
《人情の機微》
見どころ
『新参者』
 
『刑事定年』
退職刑事の「のどかな生活」
@嘘と女
A消えた妻
B疑惑の一夜
C極道の恩返し
D泥棒の帰郷
E極道志願
F張り込み
G親父の長い一日
H娘の婚約者
I夫婦裁判
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信州の高原の町の旅
小諸街あるき
北国街道小諸宿の歴史と地理を探るため、美しい懐旧の街並みを訪ねる。寺社めぐり案内も。

A消えた妻

  その日、直也は昼間出かけたきりの早季子が夜になっても帰ってこないことを心配していた。
  机の引き出しから、女性の手による手紙を見つけ出した。手紙には、夫への不満が書き連ねてあった。
  早季子は家出してしまったのか?
  と疑念がわき、これまで妻との会話を怠ってきたことを直也は後悔し始めた。
  そんなとき、たまたま実家に帰ってきた娘、真紀から、「ラヴ・アゲイン」症候群かもしれないわよ、と言われ、さらに動揺する。
  そのとき、テレヴィでは街中の交番の警官の銃が奪われたことを報道していた。

  そんなところに、まもなく大場とその子分の若者がやって来て、「早季子が知らない男と寄り添って(体を密着させるように)商店街を歩いていった」と直也に知らせた。ますますラヴ・アゲイン症候群の疑念が高まる。
  やがて、早季子から訳のわからない電話が入った。直也に「お兄ちゃん…」と話しかけるのだ。そして、「達男という男を連れて家に戻る、達男の妻の『みっちゃん』もまもなく家を訪れるはずだ」という。
  しばらくして、早季子が達男という男とともに帰宅した。あろうことか、達男は警官から奪った銃を早季子に突きつけていた。


  達男は腹の小さい男で気に入らないことがあると、逆上して妻に乱暴をはたらく習癖――DV常習――があり、妻への暴行傷害事件で検挙され服役していたという。出獄してみると、妻は行方不明になっていた。というよりも、女性の親友の助言で乱暴な夫から逃れるために遠くに旅行に出かけたらしい。
  その親友の女性は、前々から乱暴な夫と別れろと強く勧めていたらしい。
  達男は早季子をその女性と勘違いして拉致して連れ回していたのだ。妻を呼び寄せ射殺したうえに自殺するつもりでいたのだ。
  早季子としては、元警察官の妻として、銃を携行する男が暴発しないように、勘違いを正さないで言いなりになって、自宅に連れ帰り、そこで直也とともに――さらに元同僚の多田野の手を借りて――事件の解決をはかろうとしていたようだ。一般市民に被害がおよぶことを防ごうとしての判断らしい。

  はじめはトンチンカンなやり取りをしていた直也だったが、しだいに事態をを飲み込みんだ。そして、わけのわからない電話を何かの暗号と勘違いして駈けつけた多田野刑事とその部下の佐伯、さらに早季子ともに、達男の拘束を試みる。
  ところで、日本の巡査などの一般警官が携行する銃は、リヴォルヴァーの設定によって、最初に発射されるのが空弾であるという。直也たちはそのことを利用して、意図的に達男を怒らせて銃の引き金をひかせ、その隙に飛びかかり銃を奪い拘束することに成功した。

  こうした経緯から見えるのは、早季子は直也とのコミュニケイション不足に不満を持ちながらも、直也の言葉の端々から刑事や警察官の行動を理解し「警察官の妻としての心得」を身につけていたということだ。その意味では、夫の職務を深く理解し、刑事としての職務を全うするように支援していたことがわかる。
  しかも、そのうえで夫、直也を上手に操っていたのだ。直也もまた、早季子の上手な操縦・管理にまんまと乗せられて安心していたということだ。
  そういう円満で温かい家庭があればこそ、直也も現役時代に人情家の穏やかな警察官・捜査官でいられたのだろう。
  やはり、「割れ鍋にとじ蓋」ということわざにもあるとおりの夫婦のようだ。

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