5
このドラマの主題に直結する師弟関係が、このコンビです。
だが、フランツ爺さんは、とんでもないジジイなのです。
マエストロ指揮者の当代世界一をヴィエラと争う、天才的な指揮者ということになっています。
ところが、若い美女に取り囲まれることが何より大好きなエッチな奇人で、少なくとも人の前で音楽の研鑽とか指揮の研究をしている姿を見せたことがありません。一見、ただの遊び好きの爺さんに見えます。
千秋も、はじめ本物か疑うのですが、Sオケの指揮を見たとたん、全身に戦慄が走り、本物以外の何者でもないと知ることになります。音楽的には圧倒的な存在感、スケイルの大きさを誇っています。
この変人指揮者は、ひょんなことから、「のだめ+千秋」に遭遇することになりました。
そこで、千秋の才能・感性とともに、のだめの天賦の才能・センスに気づきます。
ことに「のだめ」は、若き日の自分そっくりだと思い、放っておけなくなり、彼女の音楽家としての成長の道筋も考えるようになるのです。
千秋の指導とともに。
ただし、この爺さん、正攻法では決して教えません。いや常識的な仕方ではまず人に接しないのです。
奔放な女好き、遊び好きを地で演じながら、千秋やのだめに提起する問題や指摘は正鵠を得ていて、極め付きに鋭いのです。まるで、仙人みたいな人なのです。
「人生はしょせん遊びさ」と言い切りながら、とてつもなく真剣に生きている。のようでありながら、やはり戯れている?
江藤さんが訝るように、この爺さん、いったい何をもくろんどるんじゃ、だ。
私は、こういう先生=師が好きです。じゃあ、(もし機会と才能があったとして)弟子になるかって? お断りですね。はたで見ながら技や術を盗ませてもらいたい、そういう手合いです。
この先生の偉いところは、弟子たちに徹底的に自分で考えさせ、悩み抜かせて、自分らしい答えを捜し求めるようにさせるところです。まさに、この点がドイッチュ(ドイツ的)なるところ。
私の知る限りで、ドイツ人音楽家に多いタイプ。