パリは燃えているか 目次
原題と原作
見どころ
あらすじ
「パリは燃えているか」
パリは沸騰寸前
各戦線の状況
ヒトラーの狂気
フォン・コルティッツ将軍
生い立ちと軍歴
命令への疑念
連合軍最高司令部
ドゥゴール将軍
見栄と立ち回りのうまさ
ドゥゴール派の劣勢
フランス共産党
ソ連の影響
解放闘争への参加
スウェーデン総領事
衝突の火花
連合軍からの連絡
PCFの方針
蜂起の狼煙
ドイツ軍の反撃
罠にはまった反乱派
散発する市街戦
連絡員ガロワ
戦車砲と火炎瓶
休戦協定
止まない戦闘
パリの爆破準備
休戦のあいだの攻防
首相府をめざせ
ドイツ軍防御体制の混乱
連合軍の方針転換
反ナチス戦争の正当性
原作のおすすめ
兵站戦略の難しさ
降伏への段取り
ドゥゴールの奇策
強運のギャンブラー
自由フランス軍
ドイツ軍の降伏
パフォーマンス
偶然の連鎖で歴史はつくられる

原作のおすすめ

  その辺の事情については、L.コリンズとD.ラピエールの原作(早川書房から翻訳が復刻されている)をぜひ読んでいただきたい。
  映画は、ストーリーをわかりやすくするため、単純化し、登場人物も原作とは人物造形や立場を変えて演出しているのです。

  たとえばパットン将軍。
  この映画では、彼はパリで蜂起したフランス解放組織に好意的・同情的ですが、原作ではきわめて冷淡な立場です。それは無理からぬことでした。

■兵站戦略の難しさ■

  オーヴァーロード作戦の開始以来、彼は連合軍の西部戦線総体の兵站管理(ロジスティクス)の責任者で、進軍のコースの確保やあらゆる戦線への兵員・兵器の配置と陣地構築、そして弾薬・食糧・燃料の補給体制の統制を担っていました。   連合軍が利用できそうな交通体系は、道路も橋も鉄道もドイツ軍によって支配されているか、さもなくば破壊されているのです。


  そのなかで、少しでも早くライン河へ迫るために、「いつ、どこに、何を、どれだけ」という兵力と物資の綿密な配置・補給態勢を築き上げなければなりません。それが彼の任務でした。
  そのためにはパリを迂回するしかないのです。

  巨大都市パリへの侵攻は、膨大な燃料・食糧・人員の投入が必要になります。それを実行するとなれば、苦心の末に構築した、こうした兵站計画全体をそっくり練り直し、しんどい調整が必要になるのです。
  任務に忠実なパットンからすれば、状況を客観的に分析することなく、それぞれの政治的理由から勝手に武装蜂起を引き起こした「パリ野郎なんか、くたばっちまえ!」ということになります。

  しかし、ハリウッド映画《パリは燃えているか?》では、アメリカの国民的英雄を「憎まれ役」にするわけにもいきません。
  そこで、知的で意思的な風貌のカーク・ダグラスをキャストして、パリ解放に共感する好人物に仕立て上げたのでしょう。

  しかし、それにしても、あのとき連合軍のなかで、またあの戦局で彼の置かれた立場は非常にきびしかったに違いありません。
  パリへの「回り道」は、計画と戦略の苦心と苦痛に満ちた組み直しを突きつけたのですから。
  その意味では、膨大なリスクとコストをともなうパリ解放を、その後のドイツ本土への進撃のステップとして位置づけ直して、兵站戦略を再編成したのだから、パットン少将は大変すぐれた兵站管理能力を発揮したといえるでしょう。

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