マダム・スザーツカ 目次
原題と原作
見どころとテーマ
あらすじ
映画が描き出すもの
家族、そして・・・
ネイバーフッドの崩壊
ダウンタウンとは何か
取り残されたダウンタウン
ダウンタウンの移民社会
移民たち…豊かな音楽芸術
そして、再開発ブームの嵐
変貌するダウンタウン
スザーツカのレッスンは登竜門
ピアノ教師への道
スザーツカシステム
天才児がやって来た!
マネク・セン
女ドラキュラ伯爵
孤高 スザーツカの生き方
構築性ならベートーフェン
出会いと絆
整体師コードル
ジェニー
立ち退きを…エミリー
誕生祝いのパーティ
マネクの悩みと決意
ディレンマ
ロニーの思惑
レオ・ミーレフ
旅立ちと別れ
エドワードの来訪
苦いデビュー・コンサート
それぞれの旅立ち

天才児がやって来た!

  ある日、スザーツカのもとに、インド系の30代の飛び切り美しい女性がやって来た。彼女はシューシラ・セン。息子のマネクをユーリーナ・スザーツカに弟子入りさせるためだ。
  シューシラは息子の天才的な音楽の才能、とりわけピアニストとしての資質を見抜いていた。その才能を伸ばしたいと望んでのことだ。
  シューシラは、インドではデリーの名門上流家庭の妻だった。この美しい母親は、13年前、身勝手な夫と別れて、息子と2人でロンドンにやって来た。ひどい浮気癖で家族を顧みない夫に嫌気がさして、2歳のマネクを連れてロンドンに移住してきたのだ。
  そして、インド出身の女性たちが暮らすフラット(賃貸の共同住宅)に身を寄せている。立ち振る舞いからして、インドの上流階級出身の女性らしい。
  ブリテンの首都ロンドンで専門職能がなければ、下積み仕事しかない。だが、望みと自尊心は高い。つまり、収入を得て生活を立てるすべに疎い。
  苦しいときには、インドからもってきた装飾用の貴金属・宝石類を切り売りして、しのいできた。

  いま、シューシラの生計の道は、菓子(ケイク・生菓子)作りと配達。ロンドンの有名な高級菓子店の委託従業員だ。自宅に材料を持ち帰って、ケイクとかクレイプをつくって、得意先に配達する。店側の要求は厳しい。
  が、シューシラは大雑把だ。サーヴァントにかしづかれる生活が長く、気配りをする訓練が欠けているからだ。
  これだけでは、都会での生活には心もとない。けれども、美貌のシューシラには、インド系の富裕な実業家のボーイフレンドがいる。彼女の自尊心を傷つけないように、いろいろな援助をしてくれている。
  それでも、母子家庭だから贅沢な暮らしができるわけではない。にもかかわらず、息子マネクをお金をかけてピアノを習わせようとしてきた。
  彼の才能を開花させれば、やがては名誉と高収入が手に入るようになる、というもくろみがあるのだろう。

■マネク・セン■

  マネクと母親は、インドで600年も前から続くシタールの名門演奏家(世襲の身分となってきた)の家系の出だ。
  シタールとは、インド古来の弦楽器で、大きなバンジョーのような形をしていている。通常、つま弾く弦は7本くらいだが、その下に十数本の共鳴弦が張られていて、じつに複雑な和音を醸し出す。

シタール

  シタール演奏家は、世襲の身分でもあって、その家系に生まれた子どもたちは幼い頃から、厳しい訓練を受けて育つ。そのなかの最優秀者が家の職を継ぎ、子孫を残し、英才教育を施して秘伝の技法と才能、そして血筋を守ってきた。
  マネクも先祖たちと同様に、シタールの音色を子守唄として育ち、繊細な音感やリズム感をごく当たり前のように身につけてきた。並みの音感ではない。
  この血筋と才能は、マネクのピアノの資質にいかんなく現れている。

  マネク・センは15歳の中等学校生で、母親似の飛び抜けた美貌(深い知性を湛えている)を持つ。
  マダム・スザーツカは、ごく自然にピアノの前に座り、優雅に鍵盤を叩くマネクの素質に一目で惚れ込んでしまった。翌週から週2回(しかも合計10時間近くにおよぶ)レッスンが始まった。

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