ウェストワールド 1 目次
原題について
見どころ
あらすじ
デ ロ ス
ピーターとジョン
西部劇の町
ガンファイト
夜の闇の向こうで
コンピュータシステムの発達の陥穽
ふたたびガンファイト
自立化し始めたロボットたち
牢破りと逃避行
動揺する制御本部
ロボットの反乱――人間狩り
逃げ回るピーター
プロットの先進性
当時の日本のコンピュータ
アメリカのコンピュータ工学
テーマそのものについて
AIと人間

サイバーシステムについて

  これまでのところ、コンピュータやそのネットワークシステムは、人間にとっての(ニーズや欲望実現のための)単なる道具であって、(個人または集団組織としての)人間の意識や意思(脳および身体の作用)の延長部分でしかない。
  ただし、テイタベイス化や自動化によって、それまで人間の内部にあった意識や経験、記憶や思考過程、方法論(ノウハウ)などが、ITという外部の装置に蓄積=移転することで、人間の能力の「空洞化」が起き始めていると見てよいかもしれない。
  機械に指示され、コントロールされるようになる…。
  「自分の頭で考え抜く」ことをせず、「なぜか、根拠への問い」を追求しない人びとは、外部依存と空洞化、つまりは「人間の機械装置化・道具化」に直面するかもしれない。あるいは、刹那的な、もしくは習慣的な欲望の充足・発散のために、ITに依存するシンドロームに陥るか。
  いま若者のあいだでは「スマートフォン依存症」が深刻なまでに広がっているという。

  ともかく、現在のところ、人類は、ITをより包括的な知識の結集体にしようとし、またそれを基礎に判断や作動管理をまずます自動化=自律化させようとしている。この傾向は、確かなことではある。AI( automatic intelligence :自律的に作動する人工の知能)の開発とかいってもてはやされている。
  ただし、それによって、近似的に(シミュレイションとして)人類や生物の脳や中枢神経の仕組みや運動法則を解明しようといるのかもしれない。コンピュータ科学=サイバネティクスの発達は、同時に、脳科学や脳神経学とか思考(推論)や判断の論理メカニズムの探求と結びついてきた。
  生物(人類も含む)の脳や中枢神経の機能、情報処理能力の発達は、自己保存欲求(アイデンティティとかメンタルなホメオスターシス)と結びつき、表裏一体の関係をなしてきた。
  ホメオスターシス( homeostasis )とは、生物個体がその身体組織の内部機能の安定性を維持しようとする性向や能力のこと。たとえば、体温や血流、免疫機能などの維持、各器官のバランスの維持・回復機能だ。

  好奇心は、「究極のところで」、生き物としての自己の生存や自分らしさ(個体性)を保持するようにするための機能だ。生物が成長するための学習機能を促す仕組みでもあるだろう。
  もちろん、目先の好奇心や欲望の充足にかまけたために、それがリスクを招きよせて、破滅や死滅への道を開くこともあるだろう。生存と破滅のどちらに転ぶかは、偶然なのかもしれない。
  とにかく、仮にAIが生まれるとすれば、ある情報システムが生物のように、持続的な自己保存のために、知識への好奇心や欲求を自ら生み出し、自ら疑問を立てて、その解明や解決に必要な知識や方法を習得していく、あるいは、根拠や原因を探求することになるのだろうか。要するに、自分で判断の根拠や基準をつくり出していくことになるのか。
  とすれば、最初にそのシステムを組み上げ、初期プログラムを設計した人間から自立して、独特の個性やパースナリティを獲得するのか。
  だとすれば、それは、初期プログラムの洗練と改良・革新を続けた結果として、そのような段階に達するのか。それとも、ウィルスのような撹乱的なマクロプログラムが増殖して、独自のダイナミズムを獲得するのだろうか。

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