それにしても、粘菌の散布と増殖膨張、腐海の蟲たちの爆走拡散によって、ドルクの領土の大半は腐海に飲み込まれてしまいました。大海嘯が起きたのです。
トルメキアとドルクの戦争で砲弾が飛び交い化学兵器の毒が撒き散らされた大地は、汚染されていたので、腐海の森は一挙に膨張していきました。
一方、ドルクの民衆にしてみれば、皇帝の反攻を受けて撤収するトルメキア軍の強奪と殺戮によって苦しめられたうえに、しかもドルク軍の作戦が原因で腐海が大地を覆い尽くし、襲い来る瘴気によっていよいよ生存環境を奪われ、生き残る余地を失ってしまいました。
ナウシカは民衆を救おうと奔走しますが、事態は悪化する一方です。できることはただ、メーヴェでチククを連れて空を翔け、チククの念動波によって民衆に高原地帯に逃げるよう伝えることだけでした。
なぜなら、瘴気は空気よりもずっと重いため、標高の高い地点ならば、瘴気に襲われる危険がかなり低く、生き延びる可能性が高いからでした。
ドルク諸族の民衆は、いっせいに高原・高地をめざして移動していきます。
苦悩するナウシカは疲労困憊して、ついに倒れてしまいます。
そして、長く深い眠りのなかで、この世界にはたらくさまざまな力、さまざまな生き物の心を読み取るのです。
そのナウシカを守るのは、「森の人びと」と、戦いの旅程で出会った幼年の修行僧、チククです。ナウシカは瘴気の届かない高原で昏睡し続けます。
そして、戦いの舞台はドルクの高原地帯に移ります。ところで、そこにはユパやミト、クシャナ、クロトワ、アスベルら――彼らはそれぞれ離れた別個の戦線で戦ってきました――が、運命の糸に導かれるかのように集まってくるのです。
ナウシカの周囲にふたたび結集するのです。