しかし、ドルクの民衆(好戦派)とパルティザンの憎しみは深く、和平交渉を拒み、戦いを挑もうとします。
そのとき、ユパが立ちはだかり、攻撃を押しとどめようとします。
しかし、怒りに駆られた民衆はユパを取り囲んで殺してしまいます。そのとき、死にゆくユパの姿が、かつて彼らを守って殺された高僧の姿に変わり、民衆の激情を沈めます。
チククの超能力のなせる業で、集団幻覚を引き起こし、敵対心を取り去ろうとしたのです。
こうして、和平が成りました。
ドルク諸族の長老と族長たちの多くは、故郷にもどり腐海の森と共存する道――あるいは死滅かもしれません――を選びます。
はるか遠く、風の谷やトルメキア方面に移住する道を選ぶ部族もあります。
蟲使い諸族の民衆も、蔑まれてきた自分たちが劣った種族、下等な種族ではなく、同じ人類の仲間だということをはじめて認識します。ナウシカの説得で防毒マスクをはずしてみると、ほかの人びとと同じ顔かたちをしていることがわかったのです。
それに、自分たちを含めた民衆を守るためにともにドルク皇帝と戦った、苦しみや喜びを分かち合ったという経験が、彼らに確かな自信(尊厳の回復)を与えたのです。
夥しい犠牲の上に、やっと平和が訪れようとしたとき、ドルク皇帝(皇兄)が巨大な人工子宮に包まれた巨神兵を連れて現れます。
ドルク皇帝の軍に奪われた巨神兵の幼体は、墓所の僧会によって開発された人工子宮のなかで成長を続けていたのです。
ナウシカとクシャナは、巨神兵を破壊しようと攻撃します。が、激しい砲火は、かえって子宮を破砕して巨神兵を「誕生」させてしまいました。
ついに巨神兵が復活しました。巨神兵は精神的に急速に成長し、高度な知識と判断力を身につけていきます。
ついに、滅びの危機に瀕しても争いをやめない人類に裁きを下す「裁定者」としての立場を自覚していくのでした。
ところで巨神兵は、自分を価値ある生き物として認めていつくしむナウシカに母性を求め、彼女の戦いの友として、守護者として、シュワの墓所の破壊を引き受けるようになります。
ナウシカが巨神兵をコントロールする秘石をもっていたことも、この変化を助けたようですが。
しかし、放射能を発する巨神兵と行動を共にすることで、ナウシカは被曝による障害を受け、しだいに健康が蝕まれていきます。