16歳で家を飛び出し、「人生の目標は金儲け」と割り切って生きてきたチャーリー。彼にとって、他人とは、自分の利益のために利用する「手段」でしかない。だが、ビズネスはピンチに陥った。おりしも資産家の父親が死んだ。遺産相続を期待したが、父親の遺言で、遺産のほとんどは「匿名の受益者」の信託基金になってしまった。
受益者は、会った記憶もない「兄」だった。
兄は「自閉症」だということで、精神障害者の療護施設にいた。チャーリーはレイモンドを施設から連れ出して、保護者として何とか父の遺産の分け前にありつこうと画策する。しかし、「通常の」コミュニケイション能力を欠いた兄に四苦八苦する。
ところが、レイモンドの能力を知ったチャーリーは、ラスヴェガスの賭博場でカードゲイムに挑戦した。レイモンドの驚異的な記憶力のおかげでチャーリーとレイモンドの兄弟は、プロのカード賭博師を相手に完勝した。
こうして何日も苦楽をともにしていくうちに、チャーリーはレイモンドに血の繋がった兄弟としての愛情・愛着を覚えるようになった。「このまま兄弟としていっしょに暮らせないだろうか」と願うようになった。
1980年代の後半、西海岸カリフォルニア州の港湾。貨物船から4台のランボルギーニ(イタリアの超高級スポーティングカー)が揚陸されていた。高級車の陸揚げを指揮しているのは、やり手に見える、いかにも「いけ好かない」若造(ヤッピー:キャストはトム・クルーズ)。
その頃、カリフォルニア州は、自動車の排気ガス環境基準がアメリカで一番厳しいところだった。連邦環境保護庁(EPA)も、その基準を自動車の排気ガスの規制標準として採用することになった。
そんなところに、エンジン排気量が7リットルでメチャクチャ燃費が悪い「スーパーカー」を持ち込んで、派手好みで見栄っ張りの金持ちに高く売りつけようとする。これが、今チャーリーが采配するビズネスだ。
ところが、排気ガス環境基準をクリアしないと、アメリカ国内では、乗用車または商用車としては登録許可が下りない。エンジンを封印した「飾り物(ディスプレイ)」なら売ることもできる。だが、道を走らせて自分のステイタスを誇示するのが、買い手のニーズ。
こうして、顧客との商談がまとまりかけたけれども、運輸局・環境局の検査が商売の前に立ちはだかっていて、チャーリーのビズネスは壁にぶつかっている。しかも、輸入費用は、金貸しから高利で借りて調達した。販売が1日伸びれば、利子が嵩んで利益を食いつぶしていく。
そのプレッシャー(ストレス)のはけ口を、チャーリーは、従業員のレニーと恋人のスザンナへの無理難題の押し付けに見出している。いや、じつにイヤな若造だ。