ときは12月。ウィルはさっそく、マーカスからクリスマスパーティに招待された。
だが、ウィルとしては複雑な気分だった。というのも、これまではクリスマスといえば、世の中の「仕来たり」に反発してたった1人で気ままに過ごすのが彼の「ライフスタイル」だったからだ。
イヴの何日も前に好みのホラー映画のDVDを何枚も買い込んで、家にただ独りこもって見続けるのだ。知り合いの家に行ったり、招待したりということもなく、世の中のクリスマス気分に背を向けて過ごすのだ。父親のクリスマスソングがいたるところで流されているのに反発した結果がこうなったのかもしれない。
今年も、マーカスの招待を無視しようと思ったが、こうして奇妙な友情を築いてみると、たった1人のクリスマスは正直言って孤独で寂しい。それで、マーカスへのプレゼントを探したり買ったりしていると、何だかすごく楽しくなってきた。
プレゼントを用意してマーカスとフィオーナの家に向かった。
ところが、そのパーティはこれまた奇妙なものだった。
招待客はウィルのほかにも3人いた。
1人は、マーカスの「生物学上の父親」だという中年男性で、その恋人の女性を連れてきていた。そしてさらに、その男は自分の母親である老女をともなっていた。ユニークな独身生活を送っているウィルからしても、「不思議なファミリーというか集い仲間」だった。
だが、パーティ参加者が多くて、マーカスはとても喜んでいた。その素直さに、ウィルは感動した。しかも、マーカスは「父親」からのプレゼント=靴下を素直に喜んで、心からのお礼を言った。マーカスにとっては、家のなかで気難しい母親だけを相手にしている普段の孤独から解放された上にプレゼントまでもらえるのだから、この上なくうれしかったのだ。
ウィルは、つつましい望みと素直な喜びを示すマーカスがますます好きになった。自分の子どもを持てばこういう喜びがあるのか、と感じた。
そして、いよいよウィルがマーカスにプレゼントを渡す番になった。まず黒人ロックグループのラップソングのCDを渡した。感激するマーカス。
「でも、CDプレイヤーがないわよ」とフィオーナ。
「それでもいいさ」とマーカス。
「大丈夫だよ。このCDはプレイヤーつきなんだ」とウィルが別の包みを渡した。携帯プレイヤーが入っていた。
参加者の顔ぶれから見るとじつに奇妙な取り合わせのクリスマス・パーティだった。だが、和気あいあいとして、心温まるパーティだった。結局のところ、マーカスが参加者を呼び寄せる絆をもたらしたようだ。