2014年版ゴジラ 目次
組み換えられたゴジラ神話
パラレルワールドのゴジラ
核超大国アメリカの意識…
核開発競争と「モナーク」
ムートー
原発崩壊
ムートー覚醒
ゴジラ、ハワイに出現
2大怪獣と人類
雌ムートー出現
核弾頭の運搬
サンフランシスコの混乱
ムートー産卵
核弾頭奪回作戦
人類の闘いと怪獣決戦
瓦礫だらけの都市残骸のなかで
ゴジラ神話の新展開へ
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組み換えられたゴジラ神話

  2014年のハリウッド版『ゴジラ』で描かれる物語は面白いが、私にとっては、どこか違和感が強いものだった。
  というよりも、怪獣ゴジラを《どのような状況設定のなかにに置いて描くのか》という難問に挑戦するのは、制作陣にとって大変しんどいことなのだ、ということをあらためて実感した。
  怪獣映画はしょせん存在しない生き物の物語を描く「ファンタジー」なのだが、それは、良くも悪くも、産業的かつ軍事的に核エネルギーに依存して生きる人類の存在様式への文明論的な批判を含まざるをえない。そのため、核エネルギーと放射線によって発生し生き続ける「ゴジラという生き物」を描くさいに、現実の世界の歴史とどう折り合いをつけるのか、これは非常に厳しい問題となってくるのだ。

  さて、この物語に描かれる出来事の舞台となる日本やフィリピン、アメリカなどを含む世界は、私たちが生存するこの次元の世界とは少し異なった時空に存在すると思われる。
  フィクションだから当たり前と言えば当たり前だが、ゴジラ映画にはその発生起源からして、第2次世界戦争後の冷戦構造と核兵器開発の実際の歴史が前提されていた。ところが、この作品では、この歴史的前提がそっくり転換されてしまっているのだ。
  つまり、第2次世界戦争後の歴史の動きの文脈が、現実の世界の現実とはかなりズレているのだ。このズレは、「戦争被爆国」の住民だからこそ感じる違和感なのかもしれない。

パラレルワールドのゴジラ

  その「異世界」の歴史は、アメリカ合衆国国家と軍による原爆開発と広島と長崎への原爆投下、そして戦争の終結までは、私たちの世界と同じ軌跡をたどったのだが、その後の米ソが主導した核兵器開発・核実験は、この世界の冷戦構造とは異なる文脈でおこなわれてきたことになっているのだ。
  そういう歴史状況の設定は、核兵器開発の実際の歴史を歪め、あるいは糊塗しているとも見なすこともできるだろう。だが、もしそうなら、歪め方が、隠蔽があまりにひどいので、私としては、第2次世界戦争後に歴史の流れが転換・分岐したパラレルワールドでの出来事と考える方がいいだろうと思う。

  したがって、現代まで生き延びていた太古の生物が核実験による強い放射線の影響で突然変異を起こしてゴジラが発生した、という従来の発生起源のストーリー・プロットはもはや見られない。ゴジラはすでに古生代から身体形状や生態を変えずにずっと存在していたということになっているのだ。
  すなわち、古生代ペルム紀――おおよそ2億5200万年前――以降、ゴジラとその天敵生物は存在していて、現代世界における相次ぐ核実験や原子力発電所の増大、核廃棄物の増大によって地球上での放射能濃度が増大したため、これらの超巨大生物が目覚めてしまうという設定だ。
  という状況設定はなるほど、核兵器や核エネルギー発電への依存を深めてきた人類の科学技術や産業・エネルギー構造への文明論的な批判が込められているとも言える。

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