2014年版ゴジラ 目次
組み換えられたゴジラ神話
パラレルワールドのゴジラ
核超大国アメリカの意識…
核開発競争と「モナーク」
ムートー
原発崩壊
ムートー覚醒
ゴジラ、ハワイに出現
2大怪獣と人類
雌ムートー出現
核弾頭の運搬
サンフランシスコの混乱
ムートー産卵
核弾頭奪回作戦
人類の闘いと怪獣決戦
瓦礫だらけの都市残骸のなかで
ゴジラ神話の新展開へ
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風の谷のナウシカ

2大怪獣と人類

  ゴジラはひたすらムートーだけを追跡するのだが、人類にはまるで関心を示さなかった。攻撃を受けてもまったく無頓着だった。反撃もしない。人間の武器はまったく効果がなかったせいもあるが、ゴジラはそもそも人類の存在を認知していないかのようだ。
  だから、空母サラトガを中核とする艦隊は、ゴジラに付き添うように航海していた。
  日本版の作品では、ゴジラは人類が生み出すあらゆるエネルギーやその効果に対して凶暴な敵対性を示していた。これに対してハリウッド2014年版では、ゴジラの側は人類の存在とは無関係に動き回り、ムートーと戦うのだ。
  そのムートーはと言えば、ただ核エネルギーの発生源として人類文明を認識していて、核エネルギーを手に入れるために都市や原潜、核兵器などに接近する。この接近を阻む人類の行動や文明装置に対しては恐ろしい攻撃性を示す。

  その意味では、ゴジラはけっして人類の味方ではないが、人類の文明装置を攻撃するムートーと闘うことによって、その限りで人類にとって「有益」な存在となると見ることもできる。
  とはいえ、ムートーとの闘争で都市や港湾は破壊し尽くされるので、人類にとってはやはり脅威であり、厄介な存在である。

雌ムートー出現

  その頃、ネヴァダ砂漠でも大異変が発生していた。
  ネヴァダ州ユッカマウンテン山中地下の核廃棄物保管施設に格納されていたムートーのもうひとつの繭のなかで休眠しながら成長していた雌が繭を破って地上に出ていったのだ。
  モナークからの警戒通報を受けて、海兵隊中隊が調査のために場に到達したときには、ムートーは山腹を切り崩して地上に表れ、砂漠を横断し、ラスヴェガスの市街に突入する寸前だった。

  雌ムートーの大きさは、体高が少なくとも90メートル以上で、触手や脚を広げるとさしわたし180メートル以上にはなりそうだ。
  ムートーは放射線を求めて都市ラスヴェガス――大呂の電磁波の発生源である――を襲撃したのだろう。市街を破壊しながら横断すると、そのまま西北西に進路を取った。
  おそらく雄との音波または電磁パルスによる交信で出会いの地点を定めてのことなのだろう。雌ムートーがそのまま進めば、サンフランシスコ湾に出ることになるだろう。

  さて、空母サラトガを中核とする艦隊を指揮するのは、海軍少将リア・アドミラルステンツだった――海軍少将は Rear Admiral 、すなわち提督補佐の階級で、アメリカ海軍では艦隊司令官の資格を持つ。
  彼はモナークからの情報をふまえて2頭のムートーとゴジラの今後の動きを部下にシミュレイションさせた。すると、3頭はサンフランシスコ湾外の海上で出会うことになりそうだった。
  ステンツは、巨大海獣の闘いをサンフランシスコ市街地から海に移すために、沖合に核爆弾を仕かけておびき出し、そこで核爆発を起こして3頭を始末するという作戦を編成して、大統領府とペンタゴンの許可を得た。

  メガトン級の核弾頭なら爆心の温度は1億〜数千万°Kになるので、どんな生物でもすぐに蒸発し、原子や素粒子に分解してしまうはずだった。爆心から少し離れていても数十万°Kにはなるので、生物の組織を構成する原子・分子結合を一瞬で破壊してしまうから、滅ぼすことができるという論理だったのだろう。
  生化学的にはそうなるのだろうが、そもそも生物が耐えられない強い放射線を好み摂取する「超生物怪獣」に対して、効き目があるのかどうかはわからない。
  ゴジラもムートーもアメリカ軍の小型ミサイル――そのものすごく強力な貫通力と数百万℃にもなる爆発熱を発する――浴びても何ともないのだから。
  少なくとも雄のムートーは、ジャンジラ市の原発プラントで炉心を襲って爆発させメルトダウンを起こしたが、そのさいの数千℃の高熱を何とも感じなかったようだった。

  ステンツの作戦に対して芹沢は反対した。
  「人間は自然を支配することはできません。ゴジラとムートーを戦わせましょう。地球の自然はゴジラとムートーが闘争することで均衡を保ってきたのですから。自然の成り行きに任せましょう」と。
  ヴィヴィアンは「放射線を餌にしている怪獣に核爆弾をぶつけるなんて、ばかげている」と疑問を呈した。

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