死にゆく者への祈り 目次
追いつめられた暗殺者 U
原題と原作、そして作者
見どころ
あらすじ
戦列からの離脱
ロンドンのマーティン
  アイリッシュ社会
八方ふさがりのマーティン
居合わせた神父
暗殺者の告悔
渦巻く敵意
孤高の精神
ミーアンの焦り
マリガンとの再会
惨劇の始まり
死にゆく者への祈り
2つの物語の対照
作品に見られる国民性
おススメのサイト
異端の挑戦
炎のランナー
アイアランド紛争関連の物語
黒の狙撃者

戦列からの離脱

  1970年代はじめのブリテン領北アイアランド。
  アイアランド人の若者、マーティン・ファロンは、IRAの「旅団ブリゲイド」と呼ばれる武装組織に属する名うての暗殺者だった。冷酷無比に標的たちを仕留めてきた。
  今回の作戦は、ブリテン陸軍特殊部隊のパトロール班を道路に仕掛けたトラップ爆薬でせん滅することだった。

  ある晩秋の日の夕方近く、牧草地のなかを走る道路をブリテン陸軍のパトロール隊の車両が2台走っていた。その車の動きを、遠くから見詰めるIRAの武装旅団のメンバー3人がいた。
  1人の青年は、道路の両端を結ぶワイヤーを張った。そのワイヤーは、道路の両側の生垣の地面のコンクリート製の排水管に引き込んであった。排水管のなかには、強力な爆薬があった。その起爆装置の信管にワイヤーは結びつけられた。
  走って来た車両がワイヤーを引っかけた瞬間に爆発するようになっていた。
  マーティン・ファロンとマリガン・ドカーティは、銃を手にして、そのトラップの設置を離れた丘から眺めていた。爆薬を仕掛けた若者は、牧草地のトラクターに乗りこんで隠れた。
  ブリテン軍の車両がゆっくりと近づいてきた。


  ところが、トラップまであと100メートルくらいのところで、後ろから来た白いスクールバスが2台の軍用車両に追いついた。学校帰りの子どもたちを送るためだ。軍の車両は減速し道を譲って、スクールバスを先に行かせた。
  その直後、トラップ爆薬が炸裂した。スクールバスは炎上大破して、大勢の子どもたちが死傷した。何人もの子どもたちが死んだ。
  ブリテン軍兵士たちは、瞬時に迎撃応戦態勢をとった。
  マリガンはただちに退去を指示した。
  だが、予想外のできごとに度を失った若者は、遮蔽物のない草原を走ったためにただちに射殺されてしまった。

  マーティンは、逃げようとはせずに、ただ茫然と黒煙を上げるスクールバスの残骸を眺めていた。マリガンは退却した。だが、マーティンは丘の上に立ちつくしていた。
  マリガンは、逃走用の乗用車で待ち構えていた仲間とともに逃げ去った。
  ブリテン軍が接近してくる。しかし、炎上するバスの黒煙が、軍兵士たちからマーティンの姿を遮蔽した。いつしか、マーティンの姿は消えていた。

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