死にゆく者への祈り 目次
追いつめられた暗殺者 U
原題と原作、そして作者
見どころ
あらすじ
戦列からの離脱
ロンドンのマーティン
  アイリッシュ社会
八方ふさがりのマーティン
居合わせた神父
暗殺者の告悔
渦巻く敵意
孤高の精神
ミーアンの焦り
マリガンとの再会
惨劇の始まり
死にゆく者への祈り
2つの物語の対照
作品に見られる国民性
おススメのサイト
異端の挑戦
炎のランナー
アイアランド紛争関連の物語
黒の狙撃者

ミーアンの焦り

  司祭室でダコスタ神父に目撃証言を求める刑事たちは、神父が犯人から告悔を受けたために証言を拒否していることを突き止めた。刑事たちは、黙秘は「事後従犯(殺害犯の逃亡幇助)」になるからダコスタを控訴すると脅した。だが、ダコスタは、聖職者としての義務と信義を守りぬく姿勢を微塵も崩さなかった。
  刑事たちは、もはや裁判官から控訴審決を受けて、ダコスタを捕らえ提訴して、強制的に証言を引き出すしかなかった。そのことを告げて、刑事たちは司祭室を後にした。
  マーティンがアンナと教会の周りを散歩しているとき、ダコスタを訪ねた刑事たちが礼拝堂から出ていった。その様子を、たまたま葬儀場に顧客の親族の遺体を運ぶ途中のミーアンたちが目撃した。

  マーティンはいまやダコスタ神父とその姪アンナと親しくなり、ミーアン・ファミリーの攻撃に対する防波堤となっている。しかも、クラスコ殺害事件を捜査している刑事たちが彼らに近づいている。
  殺害事件の首謀者、ジャック・ミーアンは危機感を募らせた。
  というのも、ダコスタ神父の証言にもとづいて実行犯マーティンが捕まれば、いずれ首謀者として自分が捕縛される。麻薬、少女買春、恐喝、賭博…と、捜査当局がひとたびジャックを逮捕して強制捜査をおこなえば、これまでの組織犯罪の数々が暴露されことになるからだ。
  こうなれば、マーティンもダコスタもその姪も、ひとまとめに葬るしかない、と腹を括った。そのためには、マーティンを自分の手許に置いて隙をついて罠に落とすしかないと計略した。


  ジャックは教会に入って、ダコスタに声をかけて屋上の工事現場に連れ出した。そこで、告悔を受けたからには、その秘密を守り続けるしかないのだと脅して黙秘を続けさせようとした。だが、ダコスタは脅しには屈することなく、ジャックを強く非難した。元SAS隊員のダコスタにとっては、田舎ギャングの脅しなどは怖くない。
  ダコスタの過去を知らないジャックにとっては、脅しに屈しない神父が目障りでならない。ただ、アイリッシュのジャックはカトリック教徒だから、ダコスタが聖職者としての誓いを守る限り、暴力をふるうことに躊躇いがある。
  ジャックは神父を連れてリフトに乗って、礼拝堂に降りた。
  下にはマーティンがいた。ジャックは「安心しろ、神父には手を出さない」と告げた。そして、マーティンに声をかけて、自分の葬儀場に連れていき、火葬施設に案内して、その運転の仕組みなどを説明した。打ち解けた振りをして、敵意のないことを示すためだろう。

  その夜、酔っぱらった若者の集団が教会を襲った。礼拝堂に入り込んで暴れ、調度品に火をつけた。ダコスタは騒乱に気づいて、礼拝堂に駆けつけて追い払った。暴漢の1人を捕らえて「誰に唆されたんだ」と問いただしたところ、若者は「飲み屋の2階にいた男だ」と答えた。
  ダコスタは血相を変えて飲み屋に駆け込んだ。
  なかにはジャック・ミーアンがいた。ダコスタが暴挙を責めると、ジャックは手下をけしかけてダコスタを店の外に追い出した。だが、ジャックの卑劣な仕打ちにダコスタは憤慨して、聖職者としての自制を忘れてしまった。ジャックの手下2人をとことん打ちのめしてしまった。
  その様子を見ていたジャックは、ミーアン・ファミリーの力を恐れないダコスタ神父はすぐに排除しなければと決心した。

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