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しばらく2人が悲しみを共有する時を過ごしたのち・・・
トムはデイヴィに語りかけた。
「デイヴィ、こんな暮らし方はやめよう。あした、2人で児童保護局へ行こう。ありのままを話すんだ。そして、俺はお前の里親になる」
しかし、デイヴィは、トムが里親として認められるように手続きがうまくいくか心配だった。トムから引き離されてしまうのではないかと悩んだ。
鉄道模型のジオラマに2人はいた。
トムは力強く語りかけた。
「いいかデイヴィ、よく覚えておけ。この先、どんなことがあっても、俺はお前から離れない。お前は俺の息子になるんだ」
翌朝、2人は車で児童保護局(地区事務所)に出かけた。トムは車から降り立ち、デイヴィを傍らに寄せた。そして、デイヴィの手を握り締めた。それから、2人は事務所に向かって歩き出した。
堅く絆を確認して、前に進む。
いいラストシーンだ。
人は大きな悲しみに直面した場合、その悲しみを分かち合える誰かがいることで、ものすごく救われた安ど感を得ることができるものだと思う。妻メーガンを失ったトムは、デイヴィと悲しみを共有することで苦痛を和らげることができた。そしてデイヴィとの深い絆を確信したのだろう。
私は、ケヴィン・ベイコンのファンである。このサイトで『クイックシルバー』を取り上げたことからも、明らかなように。
「演技の職人」という感じが気にっている。
繊細さを内に秘めながら、どこかに鬱屈を抱える人物。シャイなせいで他人とほんの少し距離を置きたがるが、相手を深く思い、信頼できる絆を築こうとするハートが感じられる。
品のよさと知性を備えていながら、どこかに野性味というか、他人との距離をとろうとする狼のような。
こういう人物を演じさせたら、誰よりもエレガントに演じ切る。それが、ケヴィン・ベイコンではないだろうか。
この作品では、彼の演技力、いや、何よりも大柄だが繊細な心を感じさせる存在そのもの、持って生まれた(あるいは身につけた)雰囲気がすばらしい。こういうキャスティングをしたのが、監督のアリスンだったら、彼女の才能(配役を見る目)は飛び抜けているということになる。
専門の評論家の意見はどうあれ、私は絶賛したい。ケヴィン・ベイコンの雰囲気=演技とアリスンの演出を。
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