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原題は V for Vendetta (2006年製作) 。これを小説の題名風に和訳すると、「Vは復讐戦のV」とでもなろうか。
ヴェンデッタの意味は、辞書によれば「執拗で際限のない復讐戦、殺戮」「根深い意趣をともなう殺し合い、闘争」というような意味だという。 venge, ven という語幹は、たとえば revenge, vengence などという語が示すように、報復や復讐、仕返しというような意味をもつようだ。
映像物語は、独裁政権とそのリーダーたちに対して執拗な復讐を繰り返すVという人物を、ある若い女性の目を通して描き出している。
原作は、 Alan Mooore & David Lloyd, V for Vendetta : Warrier, 1982-1985 ――雑誌『ウォリアー』に1982年〜1985年にかけて連載された、アラン・ムーア&デイヴィッド・ロイドの同名劇画作品。作品は、日本でいう「コミック単行本」となっている。
原作の刊行当時から見てブリテンの近未来社会を描いた劇画が原作。20世紀末のブリテンが物語の舞台となっている。世界中で大きな反響と論争をもたらした。不思議な感動を味わえる映像物語だ。
世界的規模での核戦争後、ブリテンでは保守党右派から生まれたファシズム政党が政権を握り、言論や報道の自由を全面的に封殺した全体主義的レジームをつくり上げた。人びとを恐怖と抑圧によって支配していた。こうした統治の手段は、武装した警察や秘密警察で、軍と警察、情報機関は一体化して独裁政党の支配下にある。
報道メディア(テレヴィしかない)はすべて国有化されていて、政府の言いなりの報道を繰り返している。だから、人びとはテレヴィからの情報をまったく信用していなかった。だが、警察による暴力と抑圧に威嚇され、仕方なく独裁政府の統治を受け入れていた。
そこに、ガイ・フォークスの仮面をかぶった1人の反逆者が出現する。ガイ・フォークスとは、16世紀末から17世紀前半にかけての宗教改革期に実在したカトリック派の反逆者で、専制王権に抵抗する革命家として伝説化し、カリカチュア化した人物。
この場合の時代状況は単純化されていて、王権の支配レジームと一体化したイングランド国教会に反逆する立場として、カトリック派に立つという。仮面はクラウン(宮廷で王のそばにいる道化師)のマスク。
この反逆者は「V」と自称する。「ヴェンデッタ(終わりのない殺戮戦・復讐戦)」の頭文字=Vを自分の呼び名にかぶせている。
この男は、独裁政権の権威を失墜させるような事件を次々に引き起こし、人びとに圧政への抵抗や不服従、さらには反乱の必要を訴え扇動していく。
映像化するのが難しい事件や場面が多いので、独裁レジームの様相は断片的にしかわからないが、それでも、民衆の反発と軽蔑のなかで必死に権威を維持している政権の強硬姿勢がやら、人びとの政府の情報操作に対する強い拒否感やら反感が描かれていて、「ブリテンらしいファシズム」が描かれている。