戦争の犬たち 目次
多国籍企業とアフリカの悲劇
物語と状況設定
原題について
原作と原作者について
  著者の経歴と問題意識
  商売としての傭兵
死にゆく者と生まれ出る者
  孤高の傭兵
投資コンサルタント
ザンガロの悲劇
戦争屋稼業の孤独
憤りと決意
  利権争奪戦の背景
「援軍」との合流
戦闘と大統領府攻撃
  新大統領
作品が提起する問題
  重苦しい現実
  悲劇の複合的な原因
  アフリカの近代
  アフリカの分割
  列強の覇権争奪戦
  独立後の現実
  冷戦という足枷
  従属と貧困の再生産
  開発援助の実態
  冷戦と傭兵

多国籍企業とアフリカの悲劇

  この映画は1980年公開作品。




  あとで説明するが、この映画では原作が描く物語のほんの一部しか描かれていない。いわば水面から顔を出した氷山の一角しか映像化されていない。
  そこで、この映像物語を理解するためには、原作を読むか、あるいはかなりの予備知識が必要となる。そこで、少し長い前置きというか予備的考察を用意した。

  アフリカ大陸では、1950〜1970年代にかけて植民地支配から離脱しようと多くの諸国が独立してからも、欧米の巨大な多国籍企業による資源支配は長く続いてきた。いや、実質的には今でもその多くが持続している。
  直接投資や金融支配(つまり経済的手段)による資源の支配と収奪は、たとえば国連UNCTADの資料を見ると、直接的暴力による植民地支配の時代よりもむしろ巧妙で系統的になったようだ。
  独立後のアフリカの新生諸国家の政治的・財政的基盤は脆く、部族対立やら暴力的紛争やらヨーロッパの植民地行政の後遺症がひどくて、どこでも政権は短期間で崩壊、交代した。だいたいが民衆を抑圧する独裁政権だった。
  希少金属や貴金属とかダイヤモンドなどの資源の探査・採掘や精製などでの支配的地位の継続をもくろむ「先進諸国」の企業は、投資や融資、献金などを釣り餌にして政変を誘発し、独裁者の首をいともたやすくすげ替えた。

  欧米諸国とソ連はそれぞれ冷戦構造のもとで、「民主主義」とか「自由」「公正」というスローガンを掲げてしばしばアフリカの政変や紛争に介入した。
  しかし内実は、民衆の悲惨な生活をよそ目に、自分たちの権力と富の拡大に都合のよい政権を据えるための介入や干渉であって、資金援助や武器輸出によってさえしこたま利潤を獲得していた。
  そういう政治的文脈を背景において、あるいはそういう背景を読み取るために、この映画作品を観ていただきたい。

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