デイ・アフター・トモロー 目次
気候変動の果てに
原題とあらすじ
見どころ
急激な温暖化
スーパーストーム
大嵐は大寒冷化の前兆
壊れゆく現代文明
襲い来る大寒波、…
バルモーラルの悲劇
氷雪に埋もれたニュウヨーク
合衆国、そして現代文明の滅亡
サヴァイヴァルの旅
文明構造の転換
温暖化の主要原因は何か
核心的論題
熱交換システムとしての地球…
熱交換で地表を冷やす
気候変動と人類文明
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評  決

大嵐は大寒冷化の前兆

  ところで、西海岸のカリフォーニア州ロスアンジェルスでは、恐ろしい異変が起ころうとしていた。
  ロスの気象センターは、何と「竜巻警報」を出そうとしていた。それまで竜巻トルネイドは大陸中央部の平原地帯で発生するものと考えられていた。だが、予測されたのは沿海部での巨大な竜巻だった。太平洋の沖合からやって来たスーパーストームが上陸しそうだったからだ。超低気圧が生み出した巨大な積乱雲の群の上陸は、大気循環と気象の構造が組み換られててしまった結果だった。
  直径千キロメートルにおよぶ大積乱雲の渦巻きが襲いかかり始めた。ロスの北側では雹に襲われていた。

  ロスのテレヴィ局は、市街でいくつも発生した巨大な竜巻の脅威の映像を放映していた。F−5を超える強度の竜巻がいくつも都市の上空で同時に発生したのだ。竜巻は高層ビルを破壊し、バスや大型自動車を巻き上げながら、市街地を攻略・破壊していった。
  竜巻は合体して直径数百メートルを超える渦巻きになった。
  無数の物体を巻き上げた空気の渦巻きは、建物や道路、そして路上の人びとに襲いかかり、暴虐の限りを尽くしていた。西海岸の大都市、ロスアンジェルスは破壊され、都市機能を喪失していった。


  さて、NOAAの緊急会議で、ジャックはスコットランドのテリー・ラプスンから寄せられた情報を報告していた。その報告によると、気温の上昇で北極の氷がほぼ完全に融解して真水が北極海全域に広がったために、海水の塩分濃度が異常低下した。そのために海流の仕組みがすっかり変化してしまった。
  北極圏の海洋の表層海流と深層海流の構造が変化したことが原因にちがいないという仮説が示されていた。海洋潮流と浅層・深層の海流の変化は、全地球的規模での海洋での循環と対流の仕組みを組み換えたようだ。
  その結果、ひとまず北極圏にはものすごく強い寒気が蓄積され、次いで大陸に沿って南下する海流が強烈な寒気を南に向かって運ぶことになろう、という見通しだった。それは、ジャックが先頃の国際会議で提示した気候変動の予想モデルと一致していた。

  だが、ジャックが示したモデルは、数百年間におよぶタイムスパンでの変動を予測するものだった。ところが、今問題になっているのは、数日というタイムスケイルで急激に展開する現在進行中の気候変動であって、地球的規模での寒冷化へのダイナミズムは今すでに始まっているという事態だった。
  というわけで、ジャックは、ただちに最新の気象情報を組み込んで気候変動の予想モデルをつくり上げなければならないと結論した。そのために、NOAAのスーパーコンピュータ=サーヴァーにアクセスする必要があった。
  だが、NOAAの長官、ゴメスは、政府を説得するためにシミュレイション演算モデルを先につくらないとアクセスが許可されないと突き放した。
  仕方なく、ジャックは彼の仮説に賛同する気象学者グループ――NASAの気象学者ジャネットやジェイスン、フランクら――とともに簡易予想モデルを構築することにした。

  その結果、今後わずか1週間から10日くらいのあいだに温暖化傾向はピークに達したのち急激に恐ろしい寒冷化がやって来て、氷雪に埋もれるであろうから、北緯30度以北の地帯では人類の文明=生存は不可能になるであろうという予測が出た。つまり、合衆国のほとんど全部が氷雪に飲み込まれるよいうことだ。
  この成果を受けて、ゴメスはジャックとともに副大統領への説得を試みたが、はねつけられた。政府は目前の異常気象への対応で手いっぱいで、この異常気象が次の局面で引き起こす動きにまでは目配りできないからだった。
  「まもなく寒冷化が急激に進むので、連邦の北部諸州の住民に対して直ちに避難指示を出してほしい」というジャックの要請は、無視されてしまった。副大統領は、緊急管理局 EMA( Emergency Management Agency )の対策会議のことで頭がいっぱいだったのだ。

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