デイ・アフター・トモロー 目次
気候変動の果てに
原題とあらすじ
見どころ
急激な温暖化
スーパーストーム
大嵐は大寒冷化の前兆
壊れゆく現代文明
襲い来る大寒波、…
バルモーラルの悲劇
氷雪に埋もれたニュウヨーク
合衆国、そして現代文明の滅亡
サヴァイヴァルの旅
文明構造の転換
温暖化の主要原因は何か
核心的論題
熱交換システムとしての地球…
熱交換で地表を冷やす
気候変動と人類文明
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評  決

壊れゆく現代文明

  スコットランドの気象学者ラプスンは、北大西洋海流が異常な動きを見せ始めているという報告をジャックに寄せていた。北大西洋海流に乗って、北極海から北海方面にはものすごい寒波が押し寄せてきていたのだ。
  だが、合衆国東部沿岸一帯には、今、巨大な熱帯性ハリケインが接近していた。高さ数十メートル、奥行き数百キロメートルの波=高潮がニュウヨークに襲いかかろうとしていた。北極圏近くでは急激な寒冷化が始まっているにもかかわらず、同時に中緯度地帯では熱帯性の嵐が暴威を揮っているのだ。

  さて、サムたちはニュウヨークのグランドセントラル駅に行ったが、悪天候で列車運行はは全面的に麻痺していた。そこでサムの一行は、コンペティションで知り合い友だちになった――大富豪の息子らしい―― J.Dの家に行こうとしたが、豪雨のために道路も麻痺状態だった。というわけで、歩いて行くことにした。
  ところが、そのとき沖合いから高潮=大波がロングアイランドに近づいていた。ビル群に襲いかかる波の高さは10〜30メートル。やがて自由の女神の像も半分以上水没した――この像の土台からの高さは90メートル以上あるにもかかわらず。
  やがて大波はマンハッタン島に到達した。
  車で避難しようとして道路の渋滞=麻痺に巻き込まれていた人びとの多くは、大波に飲まれて命を失った。このシークェンスは、化石燃料に依存する自動車交通システムという文明装置の脆さを揶揄しているようで、興味深い。

  サムの仲間は運よくニュウヨーク公立図書館――高台にあるため、道路から何十段もの階段でロビーに達するほどに建物の土台が高い――に避難することができた。しかし潮位は、普段の平均海水面よりも15メートルほど位置に達したまま下がらなかった。
  それにしても、すでに暴風雨で合衆国全域の航空便は利用不能になっていたところに、沿海部の大都市では自動車交通や列車輸送システムが崩壊してしまった。ケイブルによるIT通信網も破壊されてしまった。ウォール街も水没して金融システムの中枢も滅びた。というよりも、気象カタストロフの前に、化石燃料の大量消費を土台に構築された現代文明社会における富が意味を失ってしまったというべきか。

  雲の渦の直径が数千キロメートル以上のスーパーストームは世界中で発生していて、沿海部に位置する各国の大都市=メトロポリスに襲いかかり破壊した。ニュウヨークやロスアンジェルスの悲惨な運命は、東京、北京、上海、ロンドン、ローマ、アムステルダムの状況と同じだった。

襲い来る大寒波、そして氷雪期の到来

  その頃、大寒波の第一波はスコットランドに到達しようとしていた。
  テリー・ラプスンがいるヘドランドの気象センターでは、北大西洋の各地の海面上に配置してある気象観測ブーイから異変を知らせる情報を受信していた。
  グリーンランドからアイスランド、スコットランドにいたる海域で急激な海水温の低下が観測されていた。やがて、海水温の異常な低下はニュウファウンドランド沖でも観測されることになった。
  ヘドランドでは、普段ならまだ秋なのに、真冬並みの寒波に襲われていた。そして、異常な低温と吹雪はブリテン王国全域を覆い尽くそうとしていた。

  ラプスンの同僚、サイモンはすでに寒波の襲来を予期して、妻と子どもをブリテンからエスパーニャ南部に避難させていた。だが、ラプスンやサイモンたちは、すでにすっかり氷雪に閉ざされたヘドランドの気象センターから身動きできずにいた。
  このまま寒冷化が続けば、生存はおぼつかない。すでに避難の時期を逸している。外気温は零下20℃を割ったので、逃げるための外出は不可能だ。
  それでも、このあとスコットランドに襲来しようとしてる大寒波に比べれば、現在の寒気はほんの「序曲」あるいは「前奏曲」にすぎない程度のものだった。

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