デイ・アフター・トモロー 目次
気候変動の果てに
原題とあらすじ
見どころ
急激な温暖化
スーパーストーム
大嵐は大寒冷化の前兆
壊れゆく現代文明
襲い来る大寒波、…
バルモーラルの悲劇
氷雪に埋もれたニュウヨーク
合衆国、そして現代文明の滅亡
サヴァイヴァルの旅
文明構造の転換
温暖化の主要原因は何か
核心的論題
熱交換システムとしての地球…
熱交換で地表を冷やす
気候変動と人類文明
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医療サスペンス
コーマ
評  決

■温暖化の主要原因は何か■

  この映像物語では、膨大な量の化石燃料を消費する現代産業文明が気候温暖化をもたらし、気候環境・気候構造の危機的な大転換を引き起こすことを前提にしている。だが、主要な原因が二酸化炭素であるとは、たぶんあまりにも当たり前のことと前提されているが、明示されていない。
  18世紀に始まった産業革命以降の近代人類による産業・経済発展が大気中に二酸化炭素を蓄積させた最大の原因であることは、疑いないようだ。
  二酸化炭素が地表と大気の熱エネルギーを放散させずに蓄積してしまう効果それ自体については、科学的に証明されているといえるだろう。
  とはいえ、気候変動=温暖化の傾向や原因については、人類が科学的な気象デイタを観測・集積し始めてからまだ1世紀くらいということで、あまりに情報・地検の量や範囲が少なすぎるともいえる。

  ところで現在、マスメディアで喧伝されている「二酸化炭素犯人説」は、じつは本当の核心的な問題から論点を意図的にズラす役割を演じているように見える。
  へそ曲がりでひねくれた言い分だが、私が思うに、メディアは、化石燃料などを酸化させて大きな熱エネルギーを生み出すことよりも、燃焼の結果、地球の自然のメカニズム――たとえば植物の光合成による二酸化炭素の消費――では吸収されないことの方を問題視しているように見えるのだ。

  というのは、二酸化炭素は「温室効果ガス」であって、熱エネルギーの地表環境中への保存・蓄積効果をもつけれども、二酸化炭素それ自体はことさら温暖化熱エネルギー源となるわけではないからである。
  つまり、太陽放射による地球大気や地表への熱供給とか、人類の経済活動による熱エネルギーの外界への放出、あるいは地殻や火山の活動による地表への熱放出などが、地球表層に熱エネルギーをもたらす要因なのであって、二酸化炭素それ自体は大気中に放散された熱エネルギーを蓄積したり、大気圏外への放出を妨げるはたらきをするだけなのである。
  ということは、根本原因に対する検討や対策については、まったく素通りして、すでに地表や大気中に放散された熱エネルギーの残存状態をめぐる効果を云々するだけなのである。
  だから、たとえば植物の光合成で分解できる量までなら、地表で化石燃料の燃やしても構わないとい結論になる。もちろん、今のように野放しで化石燃料を消費するよりも、そういう限度を設けるのははるかにましで、望ましいことなのだが、何だか論理のすり替えが行なわれているような気がする。

  そして、地球上での二酸化炭素の温暖化(熱保存=蓄積)効果について引き合いに出されるのが、金星の大気組成である。つまり主成分の二酸化炭素である。その説明は、素人騙しの論理がまかり取っている。

  地球と金星とでは、太陽からの距離がまるきり異なる。
  単純比較でいえば、大気や地表の単位面積あたりの太陽熱線密度は、太陽からの距離の差の2乗に反比例する。単位容積あたりの熱エネルギー分布は、距離の差の3乗に反比例する。だから、金星には、地球と比べてけた違いの太陽熱戦が浴びせられているのだ。
  そこに、地球と比べてはるかに近い太陽との距離にある金星は、太陽という巨大な重力源による恐ろしい潮汐力を受けている。つまり、太陽の重力によって金星の地殻・マントル・内核は激しく揉みしだかれているわけだ。つまりは、金星内部では太陽による潮汐力によって、巨大な熱エネルギーが生じているのだ。
  マントル対流のもつ熱量は、地球とは比べ物にならない。
  金星の表面には、強力なマントル対流がもたらす溶岩や熱エネルギーが供給され続けている。だからマントルの成分に含まれる硝酸や硫酸が、高熱を保ちながら、地表を流動しているはずである。
  そこに、間近の太陽からの熱戦輻射を浴びるわけだ。
  この違いを度外視して、ことさら金星の大気主成分=二酸化炭素を引き合いに出して、熱蓄積や温暖化への暴走の主要因を、この期待に押しつけているわけだ。かつて、金星には地球のような海洋があったなどという、まことしやかな特殊な「仮説」の1つを示しながら。
  だが、金星は、あれだけ太陽に近ければ、大気成分のいかんにかかわらず、いずれ灼熱地獄になったであろうことは、疑いがない。
  まったくひどい論理のすり替えではないか。

  何を言いたいかというと、二酸化炭素が放出されてもされなくても莫大な熱エネルギーを生み出す産業活動を人類は続けていいのか、このことを疑っているのだ。つまりもっと端的に言うと、核燃料の使用によるエネルギー供給だって開基や海洋中に相当に巨大な熱を放出・蓄積しているではない。なのに、ことに日本とアメリカ、英国、フランスなどでは核発電は、火力発電による二酸化炭素放出を抑える手段であるかのように宣伝されているのが欺瞞的だということだ。

  核発電や火力発電のように危険なほどに巨大な熱創出で蒸気タービンを回しておこなう発電は、きわめて倒錯した欺瞞的なシステムだ。
  その欺瞞的なからくりの1つ目は、熱による発電は生み出した熱エネルギーの4分の1ほどしか電力に変換されないという非効率。つまり、人類が使用する電力エネルギー量から見ると、その約4倍も大きな熱と二酸化炭素を生み出し放出していることだ。
  2つ目は、この発電形態が危険なほどに巨大な熱量を生み出すために破滅的な事故の危険性を免れず、そのために国家戦略として、電力を大量に放出する大都市からできるだけ遠方の辺境――現在のレジーム下で産業基盤が乏しく貧しくなった地方――に発電設備を建設しているということ。発電の最も主要な受益者は大都市でありながら、そのリスクとコストをあげて僻遠の地方に押し付けるシステムではないか。これはその地方の経済生活を大都市の電力会社とそれを政策的に支援する政府にますます依存=従属させてしまう。
  3つ目は、上記の発電所建設立地の事情によって、電力の生産地と主要な消費地とが遠く離れることになり、電気エネルギーは送電する回路の長さ=距離に比例して電気抵抗が増すので、その分電圧降下と電流損耗が発生するため、遠くの大都市に送電する際に必要な電力の3倍ないし4倍以上の電力を生産しなければならなくなること。
  熱による発電の非効率性と合わせると、都市で使用する電力エネルギー量の十数倍から20倍の熱エネルギーの生産と排出――化石燃料消費と二酸化炭素排出――をおこなっているのだ。
  さらに4つ目として、大都市までの長距離の送電システムの建設し維持するために環境を破壊し、莫大な費用を投入していること。その費用はあげて電力料金に加算されている。

  こうしてみると、電気は少しも「クリーンなエネルギー」ではなく、吐き気をもよおすほどにおぞましい――しかし日々の生活のために仕様を余儀なくされている――エネルギーではないか。生産の現場から遠く離れた都会では、事実関係が見えないだけだ。これが現代文明の土台なのだ。

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