デイ・アフター・トモロー 目次
気候変動の果てに
原題とあらすじ
見どころ
急激な温暖化
スーパーストーム
大嵐は大寒冷化の前兆
壊れゆく現代文明
襲い来る大寒波、…
バルモーラルの悲劇
氷雪に埋もれたニュウヨーク
合衆国、そして現代文明の滅亡
サヴァイヴァルの旅
文明構造の転換
温暖化の主要原因は何か
核心的論題
熱交換システムとしての地球…
熱交換で地表を冷やす
気候変動と人類文明
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炎のランナー
医療サスペンス
コーマ
評  決

サヴァイヴァルの旅

  さて、ジャックは同僚のジェイスン・エヴァンズ、フランク・ハリスとともにニュウヨークのサムを救出するための「冒険旅行」に出かけることになった。ワシントンDCまで戻って、そこから出発したものらしい。
  高性能のピックアップトラックを寒冷地用に改良した車で旅することになった。とはいえ、速度は大きいけれども、もとより極地観測用の雪上車ではないから、氷雪に閉ざされた場所を移動する手段としては、はなはだ心もとない。
  案の定、キャタピラーではなくタイヤで駆動するトラックはフィラデルフィアのかなり手前で深い雪で身動きが取れなくなってしまった。そこで、ジャックたちは、そこから先は食糧や極地宿営・救助用の荷物を小舟のような橇に乗せて移動することにした。

  だが、目的地までの地理や道筋は容易に読めなかった。というのも、すべての都市――ビルディングや道路など――は分厚い氷雪のはるか下に埋もれていて過去の地図や地理感覚が役に立たないからだ。
  ジャックたちは、12階建てよりも高いビル群の上に積もった氷雪の上を歩いて移動することになった。十数階までの空間がすべて氷雪に埋もれていた。
  あるとき、3人の救助隊ティームは、巨大なショッピングモールの廃墟の上を歩いていた。ところが、モールのあるビルの薄いガラス張りの天井の上に差しかかったとき、寒冷化のために硬化して脆くなっていたガラスの上に薄く積もった雪を踏み抜いてしまった。そのため、ガラスが割れてはるか下に転落する危険に直面した。
  ジェイスンが転落しかけた。3人は氷雪の高山や極地の歩行でおするように、安全のためにザイルで互いを結んでいた。ジャックとフランクはジェイスンを助けようとしたが、3人を乗せたガラスの足場全体にヒビが入ってしまった。ジェイスンは残りの2人を生き残らせるために、自らザイルを切り離して転落していった。自己犠牲の道を選んだのだ。

  しかも、ニュウヨーク間近になって、フランクは事故で脳震盪を起こしてしまった。しかたなくそこで雪原に野営して、ジャック1人でサムたちが避難しているはずの図書館に向かった。
  けれども、ニュウヨーク全体が今や60メートル以上もの氷雪(氷床)の下に埋もれていた。広大な都市の位置を標識するような目印ははるか雪の下になっていて、場所と位置の見当さえつけかねた。
  さいわい自由の女神像のトーチを掲げた腕と額の冠の先端だけが、雪原の上に出ていた。
  それでコンパスと距離感を頼りに、何とかマンハッタンの中心部に見当をつけることができた。


  しばらくしてジャックは意識を回復したフランクとともに、氷雪に沈んだ図書館――サムと最後に連絡を取った場所――の屋上から内部に入り込んだ。
  図書館の内部もすっかり凍りついていた。絶望的な状況を目前にして、フランクはジャックにどのような慰めの言葉をかけようかと悩んでいた。
  ところが、4階の1室だけが周囲とは異なった熱分布にある兆候を見てとり、希望を取り戻した。つい数時間前まで、暖が取られていた気配があったからだ。
  扉を破って入ってみると、書籍から破り取った紙を丸めて断熱材にして、少年たちが何とか命を保っていた。それでも、応急あり合わせの「防寒具」の表面は雪・霜や氷の覆われていた。彼らが凍え死ぬ直前に会うことができたのだ。

  こうして、ジャックによってサムやローラ、ブライアンらのグループが「救出」された。
  ジャックは無線でただちにメクシコに移設された合衆国軍に救助――ヘリの派遣――を要請した。その頃には、極低温の嵐は止んでいて、ヘリを救助に派遣することができるようになっていたようだ。
  「氷雪に閉ざされたニュウヨークで生存者発見!」というニュウズが南に移転した首都に伝えられると、救助隊とともに報道陣がニューヨークにやって来た。
  メディアの報道カメラがとらえたのは、氷雪に埋もれたビルから出てきた大勢の人びとだった。生存者はサムたちグループだけではなかったのだ。
  その後も次々に街のビル群のあちらこちらから、猛寒波から避難していた人びとが現れた。高層ビルの屋上にも生存者が現れた。

  これらの人びとは、猛寒波襲来直前の天候回復時に建物の外に出て、歩いて南に向かおうとする大勢の動きの危険を察知して、屋内にとどまり、何とか暖をとって生き延びた人びとだった。一方、外出した人びとは、ニュウヨークの街から出る前に猛吹雪と極寒に襲われ、自らの短兵急な判断を呪いながら凍死していった。
  いずれにせよ、ニュウヨークを中心に構築されていた現代文明は崩壊した。衣食住や情報、移動サーヴィスを供給する文明諸装置は氷雪の下に葬り去られてしまった。生き残った人びとは、新たな社会形態=生存様式を模索しなければならないのだ。

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