デイ・アフター・トモロー 目次
気候変動の果てに
原題とあらすじ
見どころ
急激な温暖化
スーパーストーム
大嵐は大寒冷化の前兆
壊れゆく現代文明
襲い来る大寒波、…
バルモーラルの悲劇
氷雪に埋もれたニュウヨーク
合衆国、そして現代文明の滅亡
サヴァイヴァルの旅
文明構造の転換
温暖化の主要原因は何か
核心的論題
熱交換システムとしての地球…
熱交換で地表を冷やす
気候変動と人類文明
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評  決

気候変動と人類文明

  この映画では、人類の産業文明が原因で発生した寄港温暖化が超寒冷化を呼び起こしたため現代文明が滅亡するというプロットが描かれている。
  そもそも、人類に文明の発生と展開、変貌は、地球の気候変動によって大きく拘束されていると見るべきだろう。人類の初期文明の発生それ自体が気候変動の1つの結果だっというべきかもしれない。
  たとえば私たち日本人が義務教育期間に社会の歴史で習う古代文明の発生のいきさつ、それは今から見て最後の氷河期の終焉以後の気候変動と地表環境の変動によってもたらされたものなのだ。だが、そのことを学校では教えない。
  だから、メソポタミアやエジプト、インダス中地帯、黄河中流地帯などの、現在は乾燥地帯となっている地域に都市集落をともなう文明が生まれたのはなぜか、については日本人は考えないのだ。

■気候変動と文明発生■
  今からおよそ2万年ほど前に最後の氷河期が終わりを迎えた。それ以後、数1千年間にわたって北半球の大半とアフリカ大陸、南アメリカ大陸、オーストラリア大陸を覆い尽くしていた氷床と氷河は後退し消滅していった。
  地表を覆っていた氷雪は、膨大な量の水の結晶・凝固状態だから、氷床の後退のあとには豊かな湿原・湿地帯や大河川、湖沼が出現する。そして、イネ科の植物の繁茂が起き、やがて乾燥化とともに広大な森林が生育する。
  今では砂漠・乾燥地帯のサハラ砂漠・アフリカ中北部やメソポタミア、インダス川や黄河流域を取り巻く地帯は、氷河期の後は広大な森林となった。森林から流れ出た河川は季節によって氾濫を繰り返して、中下流域に肥沃な土壌の平原を生み出した。
  そして、今から7000〜6000年前くらいから気候の温暖化と北回帰線付近の乾燥化が加速していく。森林は後退していくが、大河川の流域には肥沃な大地が残された。つまり、農耕の発展によってある程度集積した人口を支える環境ができ上がった。
  氷雪として凝固していた水が低地や海洋に流れ込み、海面水位を上昇させた。河川や沿岸海域での舟運や水運によって、かさばる荷物を運搬することができるようになった。商業・貿易や手工業が発展した。やがて遠隔地貿易のための特産物生産が手工業でも農業でも生長する。
  こうして文明発生の基盤ができ上がった。


■資本主義的文明の千年紀ミレニアム
  この12〜13世紀に限ってみても、地中花粉(化石)の分析によると、紀元3、4世紀から20世紀まで、400〜600年というスパンの寒冷期と温暖期との波状的変動があったといわれている。
  この1200年間について見ると、8世紀から13世紀までの温暖期に人類は原生林を伐採して農耕地を創出して食糧を増産し、人口を増大させてきたという。11世紀には、ヨーロッパや日本列島は地表のほとんどが原生林で覆われていたという。
  この時期にヨーロッパでは遠距離貿易という形態で資本主義的文明の萌芽が生まれ、商業都市が数多く形成された。温暖化による海面の上昇によって、人類のテクノロジーが未熟な段階でも容易に利用できる港湾が自然発生したことが、海運の利用を促進しただろう。
  ところが、森林伐採と農耕地開拓、村落建設などによって、13世紀半ばまでに中央ないし西ヨーロッパの森林はあらかた消滅してしまったらしい。農耕地の急速な拡大で人類が集住する地帯の周辺の生態系は組み換えられ、農業生産は大きな壁にぶつかる。交易路を結ぶ数多くの商業都市が建設されていた。

  ところが、14世紀から寒冷期が始まって19世紀まで続いたようだ。生態系の乱暴な組み換えと農業による農地の肥沃度の低下、連作障害などによって、ヨーロッパなどの中緯度地帯の農業は気候変動に対してきわめて脆くなっていた。こうして寒冷化のなかで、14世紀には中央アジアからヨーロッパでは農業や牧畜が衰退して食糧危機が生じて人類の体力と免疫力が低下した。しかも、都市に人口が集中して、生活環境・衛生環境が極端に悪化していた。
  イスラム世界の都市では、上下水道設備が発達し、公衆衛生や医療システム、罹病者・貧困者の扶助救済制度、モスクを中心とした公教育が発達していた。だがキリスト教ヨーロッパでは、都市の塵芥や汚物・糞尿は街路の投げ捨てられ、貧富の格差は放置されていた。
  かくして、黒海周域からヨーロッパにかけてペストや天然痘などの疫病が蔓延・猖獗し、人口が大幅に減少した。数多くの致死や村落、農耕地が放棄され荒廃し、なかには再び森林に戻っていく地帯もあった。こうして、やがて人口が減少して人口と食糧生産能力とのバランスが回復していく。

  そんな過程のなかで西ヨーロッパでは産業革命と大都市形成への趨勢が生じた。近代資本主義と西ヨーロッパの列強国家と資本が支配する世界市場が確立されていく。
  ヨーロッパ内部では世界貿易システムをより一層拡大して、食糧供給や工業生産を拡大していく。資本主義的文明はほかのあらゆる文明や文化を圧倒し支配するようになった。それが化石燃料の大量消費という傾向を生み出し一挙に加速した。工業化のなかで木材に代わる熱源として、地中から採掘される燃える岩石つまり石炭の消費が増大していったのだ。
  ところで、17〜18世紀にブリテンで熱源として化石燃料である石炭が利用されるようになった経緯はこうだ。
  ブリテン、ことにイングランドでは、16世紀にマニュファクチャーと海運の発達にともなって、製鉄や造船などのために木材の消費量が飛躍的に増大した。その世紀のうちにイングランドの自然林は消滅したという。やがて産業革命の時代となり、機械の回転・往復運動の動力源として、石炭燃焼で生み出した水蒸気(膨張圧)が利用されるようになるのだ。

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