ドイツ空軍は大がかりで系統的なロンドン(とほかの主要諸都市)への航空爆撃を開始した。映像では、100機を超える大編隊のハインケル爆撃機がドーヴァーを超えてテムズに迫り、ロンドン上空に達すると、夥しい爆弾を投下する光景を描いている。
ロンドンの主要部はまたたくまに巨大な炎の群れに飲み込まれていった。中心街や近隣住宅街では建物が焼け落ち、ビルディングが崩壊して、燃え滓と瓦礫の集合になっていった。
しかし、しだいに迎撃体勢を整えてきたブリテン空軍戦闘機隊の襲撃を浴びて、ドイツ空軍の数多くの爆撃機が被弾、墜落した。ドイツ軍爆撃機の被害もまた幾何級数的に増大していった。
はじめのうち、メッサーシュミット戦闘機隊は、速度ののろいハインケル爆撃機を後に残して飛び、独自の作戦行動をとっていた。しかし、爆撃機の被害が大きすぎることから、戦闘機をジグザグのコースで飛ばせて、飛行速度の遅い爆撃機隊の上空を斜めに飛びながら護衛する体制をとることにした。
すると、メッサーシュミットの飛行速度を生かした戦闘隊形がとりにくくなり、正味の飛行距離がかなり伸びてしまって多くの燃料をロスすることになってしまった。そうなると、帰還用の燃料を残すためには、戦闘機はロンドン上空ではわずか10分足らずしか飛ぶことができなかった。しかも、蛇行する飛行航路ではブリテン戦闘機に捕捉されやすくなり、被弾・撃墜される危険性が飛躍的に高まってしまった。
運良く逃げ回ることができても、燃料不足で帰還できなくなる機も多かった。
要するに、速度と性能の違う航空戦力を混成しても、一体的な戦闘隊形をとれないがゆえに、ブリテン空軍の迎撃による被害は減らなかった。
ブリテン空軍は、戦闘機編隊を大きく2つに分けてドイツ機編隊を攻撃したという。速度が大きく、上昇性能や高高度性能にすぐれたスピットファイアを護衛戦闘機メッサーシュミットに対する攻撃にあて、速度が遅く、上昇性能が劣るが、低高度での性能にすぐれ小回りのきくハリケインを鈍重なハインケル爆撃機に対する襲撃にあてる、という大まかな任務分担(分業)を組織したという。
この任務分担は大いにあたったようだ。
ドイツ爆撃隊に対して、スピットファイア編隊が急降下旋回、急上昇旋回でメッサーシュミットを攪乱攻撃することで(そうすれば、メッサ−シュミットは得意の状況に持ち込んで回避・応戦するしかないから、速度を高めて上昇して(高高度で)闘うしかないから)、ハインケル爆撃機の編隊から分離することができる。そして、護衛機から切り離された鈍重なハインケルにハリケインが襲いかかるという戦法をとることができたという。