ボーン・アイデンティティ 目次
CIAの暴走
原題と原作について
あらすじ
長く複雑な物語シリーズ
ボーンとは何者なのか
テロリスト・ジャッカル
虚構の人物
漂 着 者
手がかりへの細い糸
ツューリヒで
逃亡、そして潜伏
パリでの攻防
トレッドストーン
ボーンの反撃準備
トレッドストーンの崩壊
ニューヨークでの対決
事 後 談
謀略と暴力のアリーナ 国際政治
ポスト冷戦の時代
理想なき現実の時代

ツューリヒで

  ゲマインシャフト銀行の本店はツューリヒにある。若者はその銀行を訪れることにした。ツューリヒ駅前で拾ったタクシーの運転手の話を聞いて、この市内の最高級ホテルの1つ、カリオン・デュラに宿を取ることにした。
  ホテルのフロントに行くと、コンシェルジェが笑顔で挨拶してきたことから、自分がこのホテルの常連客であることがわかった。会話のなかで名前は、ジェイスン・ボーンであることが判明した。その名には、わずかになじみがあるような気がした。
  ホテルのロビイでは偶然、カナダ政府財務省のキャリア官僚2人と隣り合わせた。そのうちの1人は、うら若い美女、マリー・サンジャック博士(経済学)だった。彼らは、国際経済学会主催の「ECの通貨統合(EMS)と世界経済」というテーマの研究集会に参加するために、会場となったこのホテルに来ていた。

  さて、ボーンはゲマインシャフト銀行を訪れた。そこで、あの暗証番号を告げて貸金庫に預けてある預金証書と記録を確認した。やはり、名義はジェイスン・ボーンだった。だが、驚くことに、ボーン名義の秘密口座には、何と1600万ドルもの預金残高が記録されていた。
  ボーンは顧客サーヴィス係には心中の動揺を押し隠しながら、命の恩人ジェフリー医師に100万ドルを送金し、700万ドルをパリのヴァロワ銀行(ゲマインシャフト銀行の子会社)に移すよう依頼した。何しろ資産家の資金運用ということで、銀行のサーヴィスは丁重で、電信扱いでわずか数分で送金は完了した。


  ところが、そのときこの銀行の内外には、ボーン抹殺のための包囲網が周到に張り巡らされていた。
  銀行の警備係として1人、フロントの案内係として1人、外の街路に駐車しているベンツのなかに狙撃屋が1人、さらにこれらのバックアップとして数人が配置されていた。警備係の男は、ボーンが金庫室から出るのを見届けると、目顔で襲撃開始の合図を送った。
  まず、エレヴェイターのなかで若い男が襲ってきたが、ボーンは反撃して抑え込み、銃を突きつけて襲撃態勢について聞き出した。そのまま男を盾にして、エレヴェイターを出て、ロビイに歩き出した。そのまま、ボーンは、大勢で込み合う銀行のロビイを通り抜けて外に出ようとした。そのとき、案内係の男は衆人環視のなかで銃を取り出して発射し、ボーンが人質にとった仲間もろとも撃ち殺そうとした。
  盾となった男は、身体中が穴だらけになった。だが、ボーンは巧みに逃れることができた。
  案内係は、続けてボーンと思しき後姿に向かって激しく連射した。灰色のコートを着た背中に何発もの銃弾を受けた紳士が倒れた。即死だった。
  轟音が響きわたり、パニックに陥った人びとが逃げ惑った。
  案内係は大混乱のなかを走り抜けて、倒れた男の顔をあらためた。よく似たコート、同じ背格好、同じ髪の色だが、別人だった。

  ボーンは、逃げ惑う群衆のあいだを縫って逃れ、ホテルに戻った。だが、襲撃者たちはすでにホテルまでやって来ていた。ボーンは、偶然近くにいたマリー・サンジャック博士の腕を取って、学会会場に入り込んだ。襲撃者たちも、続いた。彼らは、ボーンの居場所を確認するとむやみに銃撃を開始した。
  ボーンは逃げるために、自分の銃を取り出してマリーを「人質」に取って、いっしょに逃げることを強制した。そして、地下の駐車場まで行って、マリーの車で逃げ去ろうとしたが、そこにも狙撃者が待ち構えていた。
  銃撃をかいくぐって、2人は車に乗り込み、外に走り出した。

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