ボーンはひとまず、ホテルに行くときに見たレストラン、アルペンハウザーに入り、片隅のテイブルに席を取った。すると、太った男が近づいて、レストランから出て行くように求めた。ボーンが問い詰めると、どうやら彼が以前、カルロスとの闘いのために金で雇った「連絡員」らしい。ボーン包囲網がツューリヒでも分厚く敷かれているので、身近にボーンがいると危険だと判断したからだ。
その男からほかの「連絡員」の居場所を聞き出して、マリーを引き連れて、そこ行ってみた。そこには、車椅子の男がいた。だが、男は銃を取って攻撃してきたため、銃撃戦になってしまった。男はすでにすでにカルロス側に寝返っているらしい。ボーンは男を仕留めたが、自身の額にも傷を負ってしまった。
マリーは、戦いの修羅になるや、車椅子の男をたやすく撃ち倒してしまったボーンに戦慄した。別の部屋に閉じ込められていて、撃ち合いになった経緯を見ていなかったからだ。
次に2人は、うらぶれた安宿に逃げ込んだ。そこの支配人は、やはりこれまで金づくでボーンを助けてきた「協力者」の1人だった。だが、部屋に入り、額の傷の手当をしようとしたボーンの隙をついて、町に逃げ出してしまった。
マリーは、ボーンが、自分を闘争に利用するための人質に取っただけでなく、身体の不自由な男さえ平気で射殺するような「殺し屋」だと思い込んでいた。だから、ボーンを追跡している集団は警察や捜査当局の側だと思い込んだ。
それで、マリーはボーンを追ってきた男たちの許に駆け込んで助けを求めた。
マリーの判断は、部分的には当たっている。彼らは、カルロスのネットワークに属する殺し屋たちだったが、他方でCIA筋からもボーンに関する情報を与えられ、またヨーロッパ各地の警察の幹部ともつながっていた。
スイスの警察組織は、カルロスやCIAからの情報にもとづいて、ボーンをアメリカ大使とブリテンの議員の暗殺犯として追っていた。とりわけ、CIAの前ヨーロッパ局長、ジレットとカルロス側の襲撃者たちとは仲間どうしだった。
ところが、集団の首領は、マリーからボーンについての情報を聞き出すと、仲間の1人(大男)に彼女の抹殺を命じた。大男は、人気のない運河沿いの駐車場までマリーを拉致していくと、殺す前に車中で強姦しようとして襲いかかった。
おりよくそこにボーンが駆けつけて、男を威嚇して追い払い、マリーを救い出した。男は欲望に目がくらんで、武器を手放していたため、不意打ちを食らって逃げ出すしかなかった。だが、ボーンの手から銃を蹴り飛ばしていた。
ボーンは、逃げた男を追いかけた。
運河の河床でボーンは男に追いつき、格闘になった。素手の乱闘では、額に傷を負っているボーンは不利だった。そこに、マリーが銃を拾って運河の縁までやって来て、興奮と怒りに任せて、大男に向けて銃を撃ちまくった。が、1発も命中しなかった。男は逃げ去った。
けれども、ボーンを助けることができた。
2人は、男が乗っていたベンツを奪ってツューリヒから逃げ出した。ボーンは意識が朦朧としていた。マリーが運転して、レーゲンスブルクまで走った。そこでホテルに宿を取ることにした。部屋に入ると、ボーンは失神した。