ボーン=ウェブは、ニューヨークに戻って、おそらく復讐にやって来るはずのカルロス=ジャッカルと雌雄を決することにした。
ところが、パリ市外や周辺にはカルロスの監視網・情報網が張り巡らされている。だから、ボーンがニューヨーク向けの旅客機に搭乗したことはただちに察知されるはずだ。カルロスは合州国にも情報網や闇のネットワークを組織しているはずだ。ボーンの動きは逐一把握されることになろう。
ボーンはニューヨークのアボット将軍の住居を訪れた。主を失った住居の家財や家具は、運送業者の手で片づけが始まっていた。ボーンは、日雇いの荷運び要員の振りをして建物のなかに入り込んだ。
そこは、デイヴィッド・ウェブが育った家だった。記憶を取り戻しつつあるデイヴィッドにとっては、記憶の片隅に懐かしさを呼び起こす品々がいくつもあった。
だが、思い出にふけるのもつかの間、カルロスが殺し屋の助手を引き連れて乗り込んできた。住居のなかで凄まじい銃撃戦、格闘が展開された。
何とかボーンは、3階での激しい格闘の末にカルロスを踊り場から階下(1階)に投げ落とし、殺し屋の助手も倒し、その男のマシンガンで天井の重厚なシャンデリアを撃ち落して、階下に横たわるカルロスの身体の真上に突き刺さらせた。
これで、希代の暗殺者カルロス=ジャッカルは葬り去られた。
しかし、原作ではカルロスはこのとき死ななかった。その経緯や理由は覚えていない。乗り込んだ男が「影武者」だったのか、それとも致命傷ではなかったのか?
だから、この物語のあとも、ボーンとカルロスとの対決・闘争は持続する。
そして、ボーン=ウェブとマリー・サンジャックは結婚する。日常生活では、ボーンは完全にデイヴィッド・ウェブに戻り、大学教授としての生活を送り、子供ももうける。家庭人になったのだが、その家庭をカルロスや合衆国政府・軍に巣食う「闇のネットワーク」から守るために特殊戦闘員、ジェイムズ・ボーンの人格に復帰しなければならなくなる。