オーケストラ! 目次
原題について
見どころ&あらすじ
アンドレイ・フィリポフ
自分を取り戻すために
イヴァン・ガヴリーロフ
アンヌ・マリー・ジャケ
憧れの指揮者
スポンサーはマフィア
綱渡りの渡航
団員はパリの街に消える
崩れたリハーサル日程
変幻自在の超絶技巧!
追いつめられたアンドレイ
ロシアから祈りを込めて
ギュイレーヌの決断
楽団員探し
イヴァンの落胆
非常呼集「レアのために!」
ヴァイオリン協奏曲
イヴァンの奮闘
奇蹟が起きた!
チャイコフスキー・・・
音楽がテーマの作品
のだめカンタービレ

団員はパリの街に消える

  ところが、こうして初日の日当を受け取ったメンバーは、翌日のリハーサルのことはきれいに忘れて、パリの街に散っていってしまいました。
  彼らは、どうせロシアにいても生活向上の見通しがないので、せっかくパリに来ることができたのだから、貧しい途上国からの「密航者」としてフランスの大都市で稼ぐ道を求めようとしたのです。ここで稼いで、故郷の家族に送金しようというのです。
  涙ぐましいではありませんか。

  はるかに経済環境が厳しいロシアで生き抜いてきた彼らは、またたくまにパリの底辺や地下経済に渡りをつけていきました。
  トランペッター父子は、モスクヴァから持ち込んだ違法携帯電話の販売を始めました。けれどもそのかたわらで、団員たちの連絡網を確保するために、彼らには無料で「通話回数無制限のプリペイド携帯」を配りました。

  一方、コンサートマスターの男は、またたくまにパリのロマ族社会に溶け込んでしまいました。そのほかにも、さっそく闇市でがっちり稼ぐ者、慣れたタクシードライヴァーになる者、したたかな生存能力を発揮し始めました。

崩れたリハーサル日程

  さてさて、あらかたの楽団のメンバーが「不法移民」や「ガストアルバイター」の道に踏み出してしまった以上、公演前日のリハーサルが成り立つはずもありません。

  ところが、アンヌ・マリー・ジャケは、アンドレイが指揮するボルィショイ管弦楽団と「音合わせ+リハ」に真剣に臨もうという意気込みで、朝から劇場に来ていました。
  というのも、アンヌはチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」のソロを弾くのははじめてだったので、楽団と綿密な音合わせや打ち合わせをしようと思っていたからです。

  しかし、アンドレイとサーシャを除く楽団員たちは、なかなか現れません。苛立ち不信を募らせるアンヌ。
  そこで、その場をごまかすために、サーシャがチェロの単独リハをしてみせました。サーシャのチェロは超一流です。アンヌは驚きました。

  「一番下手なぼくの演奏はこんなものさ。ほかのメンバーはもっとずっと上手いから、リハーサルはいらないんだ」とサーシャ。
  「そうなんだ。彼らは細かな規矩に縛られ、型にはまった練習を嫌がるんだ。自発性(自然発生的な内発性=インスピレイション)を何よりも大事にしているのさ」とアンドレイ。
  不安を募らせるアンヌを宥めるために、サーシャとアンドレイは目先のごまかしに努めました。

  とかくするうちに、あのロマ族のコンマスが現れました。
  パリの一族といっしょに楽器を持ち込んできたのです。箱や袋にぎっしり詰め込んだ弦楽器や管楽器。
  大切な楽器をこんなふうに運び込むなんて、とアンヌは愕然としました。

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