ハリウッド版ゴジラ 目次
核兵器と巨大怪獣
見どころ
あらすじ
フランスの核実験の歴史
ポリネシアでのゴジラの誕生
パナマの怪事件生
ニュウヨーク上陸
ゴジラとの戦い
運河に消えた怪獣
「捨てる神あれば…」
ゴジラとの死闘
生き延びた卵と幼獣
ゴジラの起原をめぐって
ハリウッド版ゴジラの起原
身体姿勢と歩行様式…
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風の谷のナウシカ

運河ウォーターに消えた怪獣

  ゴジラは人類が繰り出す兵器に追われて、アッパーニュウヨーク湾ないしハドスン河に通じる運河に姿を隠した。というのも、ゴジラには生殖本能がしからしめるところの産卵という目的があるからだ。
  対ゴジラ前線本部は――ペンタゴンの支援を受けて――水中のゴジラを撃滅するために、原子力潜水艦隊(ロスアンジェルス級3隻)をゴジラが消えた水道に派遣した。なにしろ、ハドスン河の河口=アッパーニュウヨーク湾は幅が広いところでは6qにもなるので、ちょっとした海戦が展開することになった。
  だが、海獣としてのゴジラは水中では陸上以上に機敏かつ敏捷に動き回るので、鈍重な潜水艦は追い詰めきれない。しかも、ゴジラは水中で視覚も聴覚も駆使できる――潜水艦はレーダーと音波探査ソウナーでしか索敵できない――ので、水中で人間がオットセイを追いかけるようなもので勝負にならない。
  そこで、潜水艦はホーミング魚雷を数発発射したが、ゴジラが素早く旋回して別の潜水艦のすぐ傍らを横切ったために、魚雷は味方に命中。原子力潜水艦が撃沈されてしまった。

  原潜がニュウヨークの目先の水底に沈没したシーンは、さらりと描かれるが、核兵器と原子力エンジン、核燃料を積載した兵器が全面破壊されて沈んだのである。大変な事態のはずであるにもかかわらず、単なるエピソードの1つでしかないようだ。。
  もっとも、日本版ゴジラ・シリーズでも放射能を帯びたゴジラの破壊活動の結果については、能天気な描かれ方である。しかも、新宿で倒れたゴジラを大勢の群衆が間近で野次馬見物する場面すらある。ハリウッド版の底の浅さを責める資格は、私たちにもない。

  ともあれ、原潜艦隊はふたたびマンハッタン岸壁に近づこうとしたゴジラに向けて魚雷を発射して撃退した形にはなった。
  なにしろ、原潜は水中では視認探索ができない。音波や電波による索敵情報で判断するのだから、不正確この上ない。だが、爆発の直後にゴジラの姿――音波や放射性電磁波、巨大な物体が引き起こす水の動き――は消え去ったということで、「ゴジラ撃滅」という戦果を、作戦本部に報告した。
  対策本部は作戦成功ということで一安心。エバート市長は、「ゴジラを撃退した(ときの)市長だ」というキャッチコピーで選挙戦に臨むことすら考えた。が、補佐官に鼻で笑われた。


■卵を探せ■
  しかし、街中で暴れたゴジラの分泌物を――人間の女性用の妊娠判定剤反応キットで――調べたニックは懸念していた。とういうのは、ゴジラは必ずどこかに産卵したはずで、しかも、卵はたったの数時間でふ化するはずだと考えたからだ。そんな巨大な生物がそんなに短時間で孵化するか? どれほど早い細胞増殖なのだろうか?
  だが、あれほど複雑な身体組織を持つゴジラが細胞分裂=増殖で孵化するまでに成長するには、クジラやゾウを基準に考えると、いくら卵生でも少なくとも2年間くらいはかかるだろう。アミーバではないのだから。
  だが、突っ込みはここまでにして物語の筋書きどおりとしよう。
  そこで、ニックは勝利の安堵感にひたる対策ティームの面々に、ゴジラの産卵場所の探索と破壊が必要だと提案した。だが、その説得の最中に、軍事機密の漏洩の責任を問われてティームから放逐されることになってしまった。

■オードリーの目論見と挫折■
  ニックが追い込まれたのは、以前の恋人、オードリーの短絡的な目論見のせいだった。
  テレヴィ局で雑用ばかり押し付けられているオードリーが、テレヴィレポーターとして昇進昇格プロモウトするために、ニックの好意を利用して、ゴジラに関する機密情報(ヴィディオカセット)を盗み出して放送局に持ち込み、それが報道番組で公開されたためだった。
  つまり、ニックが保管していた機密情報が管理不備で漏洩したということにされたのだ。
  だが、それでオードリーの立場が好転したかというと、逆で、上司のキャスターに映像情報を取り上げられてしまい、結局雑用係に止め置かれたままだった。
  そのうえに、ニックからは信頼を裏切った恥知らずな女と思われてしまった。

  ゴジラの生存闘争も苛烈だが、都市の存亡がかかっているこのときに、人びとは目先の欲望に駆り立てられて生存競争を繰り広げている。人類という生物種たるや・・・かくのごとしか!?

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