ここで、諜報機関DGSEの抜け目のなさが披歴される。
ヴィクターは、この死闘を映像に写し取っていた。世紀の大スクープになるはずだった。
ところが、ヴィクターがカメラのメモリーカトリッジを開けると、メモリーカセットが抜き取られていた。ロシュ大佐の仕業だった。カセット紛失に茫然とするヴィクター。
そこに、ロシュからニックの携帯に電話が入った。
「映像デイタは適切にカット編集して返却するつもりだから、ヴィクターに伝えておいてくれ」
まったくDGSEは抜け目がない。画像デイタを本国に持ち帰って研究させるつもりだろう。核実験が原因で大怪獣が出現したとすると、ふたたびゴジラがどこかに出現する可能性は残されているのだから、この大怪獣を研究しておく必要性は高いのだ。
それにしても、人びとは物見高い。倒れたゴジラを見ようと群衆が殺到する。
マディスン・スクエア・ガーデンの地下アリーナの卵と幼獣たちを爆撃で殲滅したことに軍も民衆も安堵した。ところが、この物語の最終シーンは不気味なものとなっている。
地下街にはまだ生き残った卵があった。そのうちの1つの殻にヒビが入って割れた。なかからゴジラの幼獣が顔を出した。
そのほかにも生き残った卵がいくつあるかはわからない。複数あると見た方がいいかもしれない。この幼獣は急速に成長して、巨大化し、ふたたびこの都市に襲いかかり破壊するかもしれない。人間よ、現代文明よ、驕るなかれ、というメッセイジかも。
この手の終わり方は、「続編をつくりますよ。乞うご期待!」というメッセイジを意味するのだが、海イグアナのゴジラとしては再現しにくいだろう。
これに関連して、2008年から2012年公開をめざしてハリウッド版ゴジラの新作づくりが始まったが、その内容は続編ではなかった。
ここで、ゴジラの発生起源をめぐってあれこれと思索してみよう。
日本版ゴジラ・シリーズでも、1998年ハリウッド版でも、物語の上でのゴジラ発生の起原については、映像物語としては描いていない。
いや、日本版では「ゴジラ対キングギドラ」で、南太平洋のラゴス島に生き残っていた中生代のゴジラサウルスが核実験の放射能被曝でミュウタント化したというストーリーが提示された。そのほかには、明白な起源は示されていない。
あるいは、シリーズの個々の作品の物語ごとにそれぞれ独自の起原があると見るべき余地があるのかもしれない。とはいえ、基本的には1954年版『ゴジラ』で想定されていた起原を土台にしていると見るのが自然だ。
で、日本版初代オリジナル(1954年)では、日本の南方沖の太平洋に生息していた中生代の恐竜の生き残りが核被曝でミュウテイションして大怪獣となったという設定になっているということだ。
してみれば、日本では、中生代から生き残った海生恐竜がアメリカの太平洋での核実験による放射線被曝で突然変異したという起源説が「定説」になっていると見ていいだろう。⇒関連記事