アルフレードは祖父の大らかな性格が好きで、ひたすら利潤を追い求める我利我利亡者のような土地経営者である父親とはそりが合いません。
その父は、農場をより近代的=資本主義的な経営に変えようとしています。
大型の耕作機械を買い入れ、その分農民の賃金や労働条件を切りつめようと、いじましい努力を続けています。
要するに、父親はやり手で酷薄な資本家的経営者なのです。
農業機械の導入には投資を惜しまないけれども、農民の貧困や劣悪な労働条件にはきわめて冷淡です。
その父の兄にしてアルフレードの伯父、アントーニオは長男ながら、おそらく勉学=遊学のために大都市(ミラーノやトーレノ、ローマなど)に出たままです。
アントーニオは実家には帰らず、都市で気ままなインテリ生活を続けています。農村の旧弊な因習や地主の農民搾取にはインテリとして強い嫌悪感をもっているようです。
しかし、その地主である実家からは多額の仕送り受けて都市で「高等遊民」暮らしをしているわけです。
要するに、自分が直接手を汚して農民を支配搾取するのは厭うけれども、地主の家族としての特権的地位や富を利用することにはなんの痛痒も感じないのです。
20世紀初頭の都市のインテリの見本のような人物です。
耽美的で洗練され、優雅な物腰。そしてどこか反体制的あるいは政治嫌いの立場。
アルフレードは、このハンサムな伯父に強くあこがれています。
アルフレードの父親は、実家を出たまま帰らない兄に代わって土地経営の担い手になり、利潤の追求に躍起になっています。
ある日、祖父が年老いて体の自由か利かなくなったことを苦にしてか、牛舎で自殺してしまいます。
ところが父親は、祖父の死を内緒にして、神父や代言人(弁護士)を抱き込んで祖父の遺言を偽造し、まんまと農場の経営の後継者になってしまいます。
このやり口を目の当たりにしたアルフレードは、家族への嫌悪をあらわにして家を飛び出し、オルモの作業場に逃げ込みます。