1901年1月27日、イタリアの偉大な作曲家、ヴェルディが亡くなりました。
翌朝、ベルリングィエリ農場で2人の男の子、オルモとアルフレードが誕生しました。
オルモ・ダルコは、この農場に雇われた貧しい農民の子で、夫を失った美しい女の私生児です。一方、アルフレードは農場主にして大地主、ベルリングィエリ家の長男として生まれました。
ベルナルド・ベルトルッチ監督作品「1900年代」は、エミーリャ地方の地主と農民との階級闘争の歴史と、この2人の男の奇妙な友情を描いた物語です。
アルフレードは富裕な地主階級、オルモは貧しい小作農民。それぞれ敵対し合う階級に属しています。しかし、個人としての2人には、立場を超えた奇妙な友情や仲間意識があるのです。
場面は変わって1945年秋、北イタリアのエミーリャ地方。
アルプス南面の谷間を流れ下ってきたたくさんの支流を集めて流れるポー河の流域。平原に緑豊かな田園地帯が広がっています。
この牧歌的な田園のなかでなにやら殺伐とした気配が漂っています。
銃や刃物がついた農具で武装した農民たちが、だれかを追いかけ、狩り立てているようです。「ファシストをやっつけろ!」というスローガン。
今まで農民を抑圧し、威張っていたファシストたちが、圃場のなかを逃げ惑っているようです。
逃亡するファシストのなかに初老の夫婦がいました。耕地に残っていた女たちが2人を見つけて追跡します。
女たちはやがて夫婦を取り囲みます。体格のいい夫は怯えて激しく抵抗し、拳銃を発砲します。女たちは怒り、男の太腿と胸をフォークで突き刺して捕らえてしまいました。
別の場所では、ライフルを手にした少年がなにやらインテリ風の容貌の、繊細な物腰の中年男を捕らえ、近くの牛舎に連れ込みました。
物語は、そこから四十数年前の光景に戻ります。
オルモとアルフレードの誕生の日に。
この日、農場に出た地主(アルフレードの祖父)は、孫の誕生祝に農場の労働者たちに年代ものの高級ワインを配ります。
いかにも、威厳を備えた鷹揚な地主が、農民たちを温情主義的かつ家父長的に支配している様子です。
地主にしても農民にしても、富と貧困、身分的な格差を切実に感じながらも、まだ利害対立とか階級としての敵対関係を意識していない時代状況が見えます。
それから十数年後。オルモとアルフレードはけんか友達になっています。
アルフレードは地主の御曹司にしては変わった少年で、地主の家族としてそれとない優越感をもちながら、オルモを友達として認め、ライヴァル視しています。
つまりは、同じ日に生まれたせいか対等に見ているのです。ナイーヴな坊ちゃんです。
オルモは片意地で札付きの腕白ですが、子どもなりにアルフレードとの立場の違い、貧富の格差を意識しています。