イラクの侵略からクウェイトを解放した「湾岸戦争」の英雄、レイモンド・ショーが帰国後、政界に転身した。それから十数年後、彼は副大統領候補として大統領選挙キャンペインに参戦した。その活躍を、かつての戦友の1人、ベネット・マルコがテレヴィで見ていた。
ベネット(ベン)は、今は陸軍の少佐だが、今でも湾岸戦争の悲惨な体験記憶によるPTSDに苦しんでいた。その記憶は、奇妙な悪夢を呼び起こし、今や副大統領候補になっているレイモンドの戦時の行動に疑念を抱かせるものだった。少佐は戦友を訪ね、調査を開始した。
ベンはレイモンドを訪ねた。まもなくレイモンドは悪夢をともなう発作を起こした。ベンはレイモンドの身体に埋め込まれたチップを発見した。
ベンは手に入れたチップをデルプに調べてもらった。それは、遺伝子プログラムに介入して、完全に精神を支配する恐るべき電子装置だった。開発したのは、マンチュリアン社。ペンタゴンからの軍需物資発注で大きなシェアを占めている。
だが、さらに恐ろしいマインドコントロール装置がレイモンドの脳に埋め込まれていた。そのレイモンドは、党の大統領候補の勝利によって、副大統領に就任することになった。大統領府が乗っ取られようとしていた。
合州国陸軍少佐、ベネット・マルコ(デンゼル・ワシントン)は、過去に輝かしい軍歴・戦功を積み重ねてきたが、今は「湾岸戦争」の悲惨な体験による精神的後遺症に苦悩している。毎週、精神科医やカウンセラーを受診し、そして何十錠もの薬品を飲み続けている。
心理的ストレス障害の原因になっているのは、合州国が、クウェイトに侵略したイラク軍を駆逐するために始めた湾岸戦争(「砂漠の嵐」作戦)での体験記憶だ。
1991年1月12日の夜半、ベン・マルコ大尉が率いる小隊は、偵察活動のため、深夜の砂漠に向けて出発した。ところが、小さな村落の入り口付近で敵側ゲリラの待ち伏せ攻撃に遭遇した。ゲリラは、小型ロケットランチャーで武装し、2機の攻撃用ヘリコプターに支援されていた。
地上と上空からの奇襲を受けて、包囲され、小隊は追い詰められた。マルコ大尉は頭部に打撃を受けて気を失ってしまった。
そのとき、レイモンド・ショー軍曹が軍用車の重機関銃に取り付いて撃ちまくり、2機のヘリを撃墜し、地上の敵兵を蹴散らした。偵察小隊は2名の死者を出したものの、残りの兵員は全員窮地を抜け出すことができた。3日後、生き延びたメンバーは野戦病院に収容されていた。
…これが、陸軍の公式記録に残されている「できごと」だ。
この英雄的な行為を称えられたレイモンド軍曹は、名誉勲章(銀星章)を授与された。戦争終了後、レイモンドは帰国、退役して、一族(名門の政治家家系)の伝統に従って政界に転身した。