死刑囚のボブが死刑執行室に連れてこられた。電気椅子の頭部電極をつけるために頭髪が刈られた。そして、椅子に座らせようとしたとたん、ボビーは刑務官たちを殴り飛ばして銃を奪った。そして、刑務官を何人か射殺して、処刑監房から抜け出した。
ボビーは、ネッドとジムに銃を突きつけて脱獄を幇助させようとした。
ところが、仲間を殺された武装刑務官たちは、3人の囚人たちを誰彼の区別なく銃撃した。3人は刑務所の端の塀まで逃げて、そこから雪が吹きすさぶ荒野に飛び降りた。ネッドとジムは、仕方なく脱獄することになった。
ネッドとジムは、吹雪のなかをどうにか一晩中逃げ回って、翌朝、雪の積もった原野を歩いていた。2人は「運命共同体」だった。というのは、それぞれ片方の足首につけられた鎖で繋がれているからだ。
すると、冬枯れの草原の向こうからT型フォードに乗った婆さんがやって来た。2人は物陰に隠れてやり過ごそうとした。けれども、フォードの前に鹿が飛び出したため、車は鹿を轢いてしまった。
鹿を片付けようと婆さんが猟銃を抱えて車から降りてきた。そして、物陰にいるネッドとジムを見つけ出した。用心のために銃を構えながら、婆さんは2人を近くに呼びつけた。
そのとき2人は襟を立てた(ルバシカ風の)囚人服を来ていた。で、目の悪い婆さんは、2人をてっきりカトリック(ローマ教会)の神父だと勘違いしてしまった。というのも、婆さんが住む町には結構有名な修道院があり、そこに遠方から歴訪する修道僧が多いからだ。
婆さんはネッドに猟銃を渡して、ひどい怪我をして苦しむ鹿を住で「楽にしてやってくれ」と頼んだ。ネッドは、婆さんが目が悪いのを幸いに、銃で2人の足首を結んでいる鎖を撃って断ち切った。そのあと、鹿を殺した。 婆さんは、鹿の肉を手に入れることができた。
それで、婆さんは、道に迷ったらしい僧2人を町まで乗せていくことにした。
婆さんは2人を町の入り口で降ろして、自分の用事を足しに行った。
ネッドとジムは人目を忍びながら町を探り、ある家の物干場から衣服を奪って着替えた。もちろん、この町の人びとの普通の服装だ。脱ぎ捨てた囚人服は川に流した。
その川はアメリカとカナダを仕切る国境を流れていた。そこにかかる橋を渡り切れば、カナダ領土だ。2人は橋を渡ろうとして近づいた。だが、町の警察が厳しい検問を敷いていた。
で、2人は彼らと顔を合わせないように回れ右して、町に戻った。そして、警戒にあたっている警官から姿を隠すように雑貨店に入り込んだ。店の主は、2人が見知らぬ旅人だと思ったか、町の人には言えないような修道院(と僧)の悪口を口にした。
町の通りを警官が歩いているので、2人は店を出るに出られない状況にあった。よそ者とわかれば、怪しまれるから。店のなかで逡巡しているところに、あの婆さんがやって来た。
婆さんは橋を渡って対岸まで用事に行くというので、ネッドとジムはちゃっかり同行して国境を越えようと考えた。で、婆さんをいたわるようにいっしょに橋を渡り始めた。婆さんは、検問の警官に2人が神父だと紹介したので、難なく橋を渡り始めることができた。
ところが、あと少しで対岸に行き着きそうなところで、この町の修道院の院長と出会った。院長は、対岸の修道院で明日から始まる祝祭の打ち合わせを終えての戻りだった。婆さんは、ネッドとジムを院長に紹介した。
「あなたがたの修道院を訪れようと旅をしてきて迷った神父さんだよ」と。
院長は、2人を、修道院を訪れる予定になっている高名な神学者だと勘違いしてしまった。それで、あとわずかでカナダの領土というところで、親しげに2人を抱擁するや、肩を組むようにして修道院に戻ろうとした。
婆さんのエスコート役は、若い警官が2人から引き継いだ。
仕方なく、2人は修道院まで行くことになった。
そして、普通の待ち人の服装をしているのは、旅の途中で衣服の入った荷物を盗まれたからということにした。