ニューオリンズ・トライアル 目次
陪審評決は金で買え!
あらすじ
原題と原作
見どころ
デイトレイダーの狂乱
銃器メイカーに対する訴訟
陪審員の選任での駆け引き
ニコラス・イースター
「陪審員は売り物」
ニコラスの暗躍
陪審員をめぐる攻防
ウェンデルの苦悩
ニコラスの正体
空回りするランキンの攻撃
ランキンの失策
おススメのサイト
法廷ものサスペンス
評決
訴訟(クラスアクション)
ペリカン文書

陪審員の選任での駆け引き

  アメリカでは、合衆国憲法そのほかの法律や慣習法にしたがって――全部というわけではないが――事件の性質や内容に応じて陪審裁判がおこなわれる。日本の裁判員制度も、アメリカの陪審員制度を相当に参考にしている。
  日本の裁判員の選任とよく似た方法で一般市民から陪審員を選び出して、法廷での審理にもとづいた評決をおこなわせる。アメリカは移民からなる国民なので、地域や地方ごとに公正さや公平を期待して、住民人口の人種構成にほぼ比例して各人種(エスニシティ)から陪審員を選ぶようになっている。
  そこで、当事者が民事裁判では提訴する管区を選ぶこともある――たとえば、人口中にヒスパニック系あるいはアフリカ系の比率が高い地区を選ぶとかすると、ヒスパニック系あるいはアフリカ系の原告に同情的な評決になりやすい場合もあるようだ。

  この陪審裁判で判事の役割としては、法律の専門家としてアドヴァイスしたり、審理の進行の管理をあいたり、尋問や弁論の本題からの逸脱を防いだり、解明が必要な点を提示したりすることなどが期待されている。

  陪審員の選任では、州や地区などの司法管轄区ごとに有権市=選挙人名簿をもとにして陪審員メンバーの候補を選び出して、本人に通知し裁判所に召喚する。そこで、原告・被告双方の弁護士を立ち会わせて――弁護士や判事が――候補者に一定の質問をぶつけて返答させながら、それぞれが自分たちに有利な評決をしてくれそうな、あるいは「中立・公正さ」を保ってくれそうな人物を陪審員に選任する。
  もちろん、このときの質問への返答だけでなく、陪審員候補者の職業、所得、階級・階層とか支持政党、政治的信条など、わかっている情報にもとづいて、各陣営が選び出す。
  そして、自分たちに不利な意見や評価をしそうな人物に対しては、選任忌避を表明して、陪審員メンバーから外そうと画策する。もちろん、原則的には、選任手続き法廷内部での審査をつうじて、あまり偏りがないように配慮されるようだが。


  そのため、陪審コンサルタントたちは選任手続きに参加して、候補者たちの法廷での返答や発言、表情、姿勢、そして事前に入手した資料(職業や来歴)などから心理分析しながら、弁護士に助言する。
  したがって、陪審員選任手続きの段階で、すでに法廷での論争・対決、駆け引きは始まっている。自分に味方するであろう陣営・戦線の構築をめぐる争いが、激しく繰り広げられるのだ。
  つまりは、そういう戦闘における参謀(スタッフ)として、陪審コンサルタントたちは活躍するわけだ。

  ところが、こういう手続き過程でランキン・フィッチはけっして表舞台には出ない。
  選任手続きには、自分の代わりとなる弁護士やコンサルタントを出廷させ、その代わり、彼らに隠し撮りカメラや隠しマイクロフォンを持たせて、法廷内の映像や音声を収録させる。
  ランキン自身は「隠れ家」に潜んで、多数(少なくとも30人はいそうだ!?)のティームスタッフとともに、それまでに収集した情報とともに映像や音声からの情報を解析・総合して受け入れや忌避の判断を下し、それを即座に無線で法廷の弁護士たちに伝える。

  とはいえ、いつでも自分たちの思惑どおりのメンバーが選ばれるわけではない。気に入らないメンバーが選ばれることもある。そういう場合には、ただちに、弱みをつかんでの脅迫・強要、さらには大金をつぎ込んでの買収――ただし目に見えない、法律の網をくぐるというのが鉄則――工作を始めるのだ。
  要するに、銃器メイカーは、ランキン・フィッチという秘密情報組織、暴力装置をつかって、陪審評決を支配しようというのだ。

  ところで、陪審員は12人で、これに補欠員が3人加えられて、法廷審理に参加する。というのは、正規の陪審員が何らかの理由で陪審員を続けられなくなった場合に備えて審理に立ち会わなければならないからだ。
  陪審員の選任手続きでは、およそ50人くらいの候補者のなかから12人プラス3人を選び出すことになる。

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