他方でランキン・フィッチはマーリー(ギャビー)をも追い詰めていた。
粗暴な脅迫担当の男を彼女の隠れ家に差し向けて拉致しようとした。だが、彼女が必死で抵抗すると、殺しても構わないという闘いになった。
ギャビーは殴り倒されながらも、危ういところで男のナイフを奪って下腿に突き刺して歩行不能にした。
ギャビーは、粗暴な戦いを挑んできたランキンに電話して、反撃を試みた。
「あなたが差し向けた男は今夜帰れないわ。脚をひどく傷めたから。
あなたがたがそういう対応をするのなら、こちらは陪審員評決の買収代金を釣り上げることになるわ。1500万ドル払いなさい。金額については交渉に応じません!」
■ジェフ(ニコラス)の反撃■
評決を提示する期限が明日に迫った。
陪審員団は1室にこもって討議し、結論を出さなければならない。
ヘレーラが論争を仕切ろうとした。もちろん、「銃器メイカーに責任はない。セレステに賠償金を払う必要はない!」と強硬に言い張った。そこには、論拠の提示はなく、単純な結論があるだけだった。
これに対して女性たちが反発した。
ところが、ヘレーラは「もはや議論の余地はない。多数決を取ろう」と言い出した。
しかしニコラスが反論する。銃製造会社に過失責任があるという反対意見を主張するというよりも、これまでの証拠や証言を丹念に精査しようと言い出したのだ。
粗暴な脳みそのヘレーラに比べて、並みの法律家以上に法律論争に長けているニコラスは、緻密な論争なら勝つ自信があったからだろう。あるいは、ただ勝訴だけを性急に目指すのなら、ヘレーラと同じ次元での言い争いでしかないと考えたからか。
これに対してヘラーラは強硬に反論した。ニコラスは、その理由を聞き出していく。
結局、ヘレーラは、自分以外の人間が多額の金を受け取るという事態が気に入らないのだ。問い詰められるうちに、はしなくもヘレーラは、そういう正直な心情を吐露してしまった。論争は彼の負けである。
陪審員団は、論点を一つ一つ検討していくことになった。
ニコラス真理が始まって直後のうちは、強引に原告側の優位に持ち込もうとしていた。ところが、陪審員が脅されて自殺未遂を起こす騒ぎを見たり、ランキン側の悪辣な策謀を見たりしているうちに、法廷審理で出てきた問題点をきちんと検討してしかるべき結論に達するべきだと考えるようになった。
彼は優秀な法研究者なのだ。ただ単に訴訟に勝つことよりも、問題の性各に即応したしかるべき法的判断を下したくなったのだろう。