ランキン・フィッチのティームによる――過去の不倫を暴き出すという――脅迫で追いつめられた女性は、トイレのなかで睡眠薬を過剰に飲みこんで自殺をはかった。異常に気づいたニコラスが駈けつけて手当てしたが、意識不明のまま病院に運び込まれた。
ニコラスは、陪審員たちを操ろうとするニコラスとランキンとの戦い=駆け引きに巻き込まれて自殺をはかるまでに追いつめられた者が出たことで動揺する。ランキンの策謀は予想以上に陰湿で執拗だと痛感した。
さらに、はじめのうちは陽気だった黒人の青年が、HIV検査で陽性反応がでたことをネタに脅迫されたことで、動揺しすっかり落ち込んでいた。
さらに、ニコラスが陪審員たちを誘導しようとしていることを知ったランキン・フィッチは、調査員の1人をニコラスの住居に侵入させて、コンピュータのデータを盗み出させようとした。ところが、その男の侵入最中にニコラスが部屋に戻ったため、男は逃げ出し、ニコラスが追いかけて乱闘する騒ぎとなった。
侵入者が部屋を物色する様子は、ニコラスが仕かけておいた隠しカメラに録画された。
一方、ギャビーはマーリーの偽名でランキンに電話して、陪審評決を買収する代金として1000万ドルを請求した。同じ要求額をウェンデル弁護士にも提示した。
ギャビーはランキンへの電話で、陪審員を操るために動いているのがニコラスだと打ち明け、これまでにランキンの意想外のできごとが起きたのは彼の画策だと告げた。だから、銃器メイカーに有利な評決を引き出すために要求額を払え、というわけだ。
ニコラスは、ランキンが仕かけた攻撃に対抗して、自分の画策の威力がどれほどのものか示すために、ランキンが選好した陪審員の1人、中年の女性を陪審員メンバーから追い出すための工作を仕かけた。
その女性は陪審員質にアルコールを持ち込み隠れてしょっちゅう飲んでいた。依存症なのだ。ニコラスは自ら二日酔いを偽装して彼女から「迎え酒」をもらう段取りに運び、その動きのなかでその女性が酒瓶を持ち込んでいることが発覚するように仕向けた。
彼女は、陪審員メンバーから外された。
■陪審員の隔離■
これまでの陪審裁判で思うように評決を操ってきたランキン・フィッチにしてみれば、はじめて経験する反撃だった。いささか逆上気味のランキンは、暴力を見せつけてニコラスとマーリーを威嚇しようとした。
破壊や暴行専門のゴロツキ・スタッフをニコラスの部屋に押し込みさせて、乱暴な家探しと破壊をおこなわせた。そのゴロツキは、床板をはがして、ニコラスのi-Podを見つけて盗み出し、さらに室内に灯油をまいて放火した。
しだいに暴力的傾向がエスカレイトしていく戦いの先行きを恐れたニコラスは、ギャビーに作戦の中止を提案するが、ギャビーは続けることを強く主張した。彼女には、この作戦に何やら強い思い入れを抱いているらしい。
そこでニコラスは、ランキンたちの攻撃から陪審員メンバーを守り、なおかつ、ランキンへの痛烈な反撃を加えるために次の作戦を考え出した。
ニコラスはハーキン判事に、今回の自室への侵入と破壊、放火は陪審員を脅迫しようとする組織の仕業だと通報し、先日録画した侵入者の映像を提出した。
事態を深刻に受け止め憤りを抱いた判事は、陪審員団を――厳重な警護を施して――法廷を出たら安全な場所に隔離することにした。
そうなると、ランキン・フィッチのティームは、今後いっさい陪審員に近づくことはできない。こうして、それ以後、ランキンは陪審員を操作する荒業を打ち出すことができなくなってしまった。
残された手段は、マーリーに1000万ドルを支払うことだけだ。
というわけで、マーリーと会って要求を飲むことにしたと意思表示した。だが、その裏では、調査員とゴロツキを駆使して、マーリーの正体と居場所を暴き出し、力づくで排除しようする作戦を進めていた。