クイーンズ・イングリッシュを話しジェントルマンの世界で洗練されたティム・エヴァレットとは対照的に、コックニー(ロンドン下層民衆の英語)を話すテリー・レザーは、ロンドンのダウンタウンの外れで中古車販売業を営んでいる。売っている車のなかには、出所不明の盗難車もあるようだ。
だが、会社は借金だらけで経営危機に陥っている。町の高利貸しから運転資金を借りたものの、当分返す当てがない。利子の支払いが遅れている。
そこで、金融業者は2人の強面を取り立てに送り込んできた。
テリーの会社の従業員、イングリッドとエディは2人の暴力に怯えてしまった。
ついに彼らは、売り物の車を破壊し始めた。さらには、高級なドイツ車を借金の片に奪っていった。テリーは資金繰りに窮していた。
そんなとき、おりしも悪仲間のケヴィン・スウェインの元ガールフレンド、マルティーヌ・ラヴから呼び出しがかかった。ケヴィンは写真家で、以前、マルティーヌと親密だったことがある。
マルティーヌはテリーに「儲け話」を持ちかけた。銀行強盗のヤマだ。襲撃先は、ベイカー・ストリートのロイズ銀行支店。
週末の休日のあいだに、銀行から1つ店を置いた店舗からトンネルを掘って地下の貸金庫に侵入する。貸金庫の中身をかっさらおうというのだ。
「とにかく、考える時間をくれ」をテリーは返答した。
テリーにとって家族が心配だったのだ。
妻のウェンディと2人の娘たち。会社が経営危機に陥っている今、家族のためには大金がほしい。が、危険な状況に巻き込みたくない。
しかし、連日、容赦のない借金の取り立てに押しかけてくる高利貸しの手先を見て、テリーは決心した。
とはいえ、仲間を集めて襲撃の手立てを考えなければならない。テリーは、ケヴィンとデイヴ・シェリングに声をかけ、さらに詐欺師のガイ・シンガーに相談した。「少佐」と呼ばれるガイは、ケチな犯罪者には珍しく、洗練されたクイーンズ・イングリッシュを話す気障な男だった。ガイはトンネル掘りとコンクリート破砕の技能を持つ、キュプロス出身の機械エンジニアのガンバスを仲間に入れることにした。