何と、脳死状態の患者の身体から切除した臓器を、電話をつうじてオークションしているのだ。臓器移植以外にはもはや治癒や延命の方法がない患者のうち、大金持ちか、あるいは実験的な治療として病院が費用を負担してもらえる人たちの代理人や家族が、電話の向こうで買取金額を提示しているのだ。
臓器1つについて何十万ドル、何百万ドルという値段が示されている。
ジェファースン研究所は、脳死状態の患者を集めてその臓器を切除し、全世界の顧客を相手に電話オークションを繰り広げているのだ。そして、莫大な額の収益を獲得している。この大規模な組織的謀略は、各地の巨大な病院の首脳陣を巻き込んでいるのかもしれない。
ところが、スーザンの潜入は、この研究所の警備保安要員たちに発覚してしまった。この研究所では、いたるところに監視カメラが設置されている。動き回り探り回るスーザンの姿は、中央監視室の監視テレヴィ画像に映し出されていた。その警備陣はといえば、医療機関にしては度外れに重厚で強力だった。潜入者は捕縛抹殺するという態度が明白だった。
施設の廊下を歩いていたスーザンは、物々しい多数の足音が殺到してくるのを察知して、逃げ回った。
けれども、どんどん追いつめられて、研究所の外に逃れ出るのは不可能になってしまったかに見えた。あの殺し屋も呼び戻されたらしい。
ところが、そこに患者搬送車が脳死患者を収容して戻ってきた。研究所の搬入口に停車すると、運転手と搬送係が患者を建物の内部に運び入れ始めた。搬送車はかなり頻繁に出入りしているようだ。
それを見たスーザンは、搬入口に止まっている搬送車の屋根の上に身を潜めた。 しばらくして、患者の運び込みを終えた運転手は、運転席に戻ると、ふたたび研究所の出口に向かった。スーザンは、どうにかこうにか研究所から逃れ出ることができた。
スーザンは疲労困憊して病院に戻った。
だが、あまりに恐ろしい陰謀を知ってしまった彼女にとっては、院内の誰もが、外部から来た患者の家族・面会者ですら疑わしかった。
彼女は、院内での謀略の黒幕は、麻酔科部長のだと考えていた。それに対して、麻酔部長の攻撃からスーザンの研修医としての立場を守ってくれた外科部長は、味方ではないかと判断していた。
そこで、まず外科部長の部屋に駆け込んで、調べだした秘密、謀略の構図を報告した。部長は大きな衝撃を受けたようで、アルコールを飲んで気持ちを落ち着けようとした。スーザンにも、飲むかと尋ねた。
スーザンも衝撃とストレスを紛らすために、ブランディを1杯もらうことにした。
ところが、飲んだ酒には筋肉弛緩剤が入っていた。スーザンは全身が麻痺してしまった。そして、外科部長の算段によって、あの「第8手術室」で全身麻酔を施され、急性虫垂炎の手術を受けることになった。秘密を知ったスーザンを一酸化炭素で脳死させ、臓器の提供者に仕立て上げようとするためだ。
このとき外科部長ジョージ・ハリスは、スーザンは急性虫垂炎を発症したので自ら手術(執刀)を手がけるという方針を打ち出して、医療ティームを呼び集めた。そして、第8手術室(OR8)に患者を搬入する手はずをとった。意識が戻ったスーザンはストレッチに乗せられて病院の廊下を運ばれていった。
絶体絶命のスーザン。だが、偶然、途中でマーク・ベロウズと出合った。彼は急に目の前から逃げ出したスーザンを探していた。それで、ストレッチに乗せられて運ばれていくスーザンに声をかけた。
スーザンは、外科部長の罠にはまって、これからOR8に運ばれてしまう。これは、自分を一酸化炭素で脳死させるためだ、助けてほしい、と訴えた。