デイ・アフター・トモロー 目次
気候変動の果てに
原題とあらすじ
見どころ
急激な温暖化
スーパーストーム
大嵐は大寒冷化の前兆
壊れゆく現代文明
襲い来る大寒波、…
バルモーラルの悲劇
氷雪に埋もれたニュウヨーク
合衆国、そして現代文明の滅亡
サヴァイヴァルの旅
文明構造の転換
温暖化の主要原因は何か
核心的論題
熱交換システムとしての地球…
熱交換で地表を冷やす
気候変動と人類文明
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評  決

熱交換で地表を冷やす

  さて、温暖化を緩和ないし止めるような人類の科学技術と地球環境との妥協策はないものだろうか。ここからは、私の勝手な妄想である…。
  熱交換の原理は熱平衡の法則によって成り立つものである。熱エネルギーの状態は、ポテンシャル(位置エネルギー)と同様に、高い状態からより低い状態へと移動変異して平衡状態に落ち着こうとする。
  言い換えれば、熱エネルギーはより高い状態の物体・物質からより低い状態のものに移動して、両者の差異を限りなく小さくして平衡状態になるということだ。ぶっちゃけて言えば、温度が状態の高いものから低い状態のものに熱は移動して、両方をバランスさせるると、平衡状態になって熱の移動は収まる。
  今、2つの物体のあいだの関係で述べたが、物体はいくつあっても、熱平衡の法則は貫徹する。つまりは、熱エネルギーの最高の状態は、最低の状態に向かって熱エネルギーを放出・移動させるということだ。

  さて、人類が発電やら機械動力のためにエネルギーを取り出すために、どうしても熱生産という媒介過程を経なければならないという条件が不可避だとしよう。それでも、今までのような莫大な量の熱排出と二酸化炭素放出をともなわないようなエネルギー源を手に入れるための妥協策はある。それは、すでに存在している割合単純な――門外漢の私でも知っているような――技術を応用すればいい方法である。
  もちろん、現代文明による環境変動・気候変動を「解決」「解消」するものではないが、相当程度緩和できる方法ではある。そして、それは、地球が巨大な熱交換システムであるという事情に適っている仕組みである。

  その方法とは、ヒートポンプのような熱交換システム=エネルギー生産の仕組みを全地球的規模で組織することだ。
  その場合の熱源は、基本的に地球に降り注ぐ太陽からの熱線による熱と人類が排出する熱である。そして、準類の介在活動による熱生産・排出量よりも太陽から地球に降り注ぐ熱線による熱量の方が圧倒的に大きい場合でも――リンゴの果実の中身と薄皮ほどのに違っているとしても――使える方法だ。そして、夏の生産・排出よりも温室効果ガスの蓄積の方に温暖化の主要原因があると見なす場合にも。

  ヒートポンプとは、譬えて言えば、自動車のラディエイターの仕組みを逆方向に運転するシステムである。あるいは、冷蔵庫の裏側にある熱交換器の配管回路のようなもので、その仕組みを逆方向で運転するようなものある。
  きわめて細い管の回路に沸点が低い熱媒質を循環させ、ある部分で熱エネルギーを吸収させる。この熱エネルギーを水温の上昇などの仕事に振り向けてエネルギーを取り出す方法=システムである。
  電気回路でいえば、トランスフォーマー(変圧器)の仕組みとよく似ている。ただし、回路を流れるのは液体や媒質である。1次側回路の熱源から2次側回路の媒質が熱エネルギーを吸収して、そのエネルギーを水温上昇やらに利用する仕組みである。光景の細い管2回路を互いに隣接させて、紐のように螺旋状に編み込み、熱源側配管の流液から2次側配管の流液に熱エネルギーを写すのだ。
  この仕組みを使えば、水温15〜20℃の河川の水を利用して95℃の熱水を生み出すことができる。ただし、その場合、トランスミッター熱媒質として沸点が水温よりも低い物質――たとえばフロン――を利用することになる。それはまた、産業廃棄物としての劣化フロンを大気中に気化させないで回収再生・廃棄する仕組みを必要とするのだが。


  つまり、地表や大気が温暖化(温度上昇)するならば、その温度上昇分の熱エネルギーを熱交換回路システムで、発電のための熱水生産やら熱水供給のために利用するわけだ。
  要するに、特殊なヒートポンプシステムが温暖化の悪影響の著しい場所から熱エネルギーを奪い吸収して、人類の役に立つ仕事のエネルギー源に回すということだ。
  たとえば、砂漠の表層にヒートポンプ配管回路を埋設して地表の熱を奪い取り――つまり地表温度を下げて――、その熱エネルギーで、発電用水蒸気タービンあるいはやピストン動力用とか給湯用の熱水を生産するわけだ。
  あるいはヒートアイランド現象のひどい都市のビル群の屋上やら側壁やら道路に設置・埋設して、温度上昇に回るエネルギーのいく分かを奪い取って、家力発電やら原子力発電による危険な熱生産に置き換えるのだ。もちろん、熱交換器回路を地表や大気中に設置してもいいだろう。
  すると、地表や大気の熱エネルギーの一定部分を取り去って、このエネルギーを気候温暖化とは別の仕事に応用するわけだ。この場合には、熱媒体を使う必要がなく、1次側も2次側も水だけでも十分な熱交換ができるだろう。
  もちろん都市のビルの屋上や空き地に植物を植えて、熱戦を吸収・分散させるという方法でもよいが、ヒートポンプの方が植物には向かない人工的な環境や砂漠に向いているだろう。

  ヒートポンプ技術はすでに存在する。そして、火力発電やら原子力発電の装置に組み込まれている。あるいは、地下水や温泉水から熱を取り出して、給湯や発電に利用している装置も現存する。
  ではなぜ、この技術を地球温暖緩和のために利用しないのか。じつに不思議である。
  その理由は、私が考えるに、
  ヒートポンプ・テクノロジーの最大・最有力の保有者・製造者は、大型重機械・重電装置のメイカー ――彼らの中核部分は、放射性物質製造産業=核燃料産業や石油化学産業、航空宇宙産業などと結合して軍産核複合体を形成している――であるから、これを火力発電やら原子力発電などというぼろい利潤を獲得できる産業を衰退させるわけにはいかないからではないか。
  GE、ウェスティングハウスとか三菱重工、東芝などは、巨大発電プラントや先端兵器やその制御システム・部品などの有力メイカーである。
  そういう有力世界企業は、飛び抜けて優れた熱交換器装置やヒートポンプの技術を保有・開発している。そして、国家の軍事力やエネルギーを採配する企業として、政府に対して、そして財界全体に対して、巨大な発言力をもっている。
  しかも、石油燃料や電力生産をめぐっては、自動車産業や電車、船舶、大型プラント建設などの産業・企業群が深くコミットしている。つまりは、有力な産業群が結集して、強大な利害ブロックを形成している。それらは、現在のエネルギー生産体制の存続に利害を感じている。

  さらに一番大きな理由は、寄港温暖化を緩和する事業に対しては誰も費用を払ってくれないからだ。兵器などの政府調達は開発費も含めてぼろい儲けを生み出すのに、温暖化抑止については人類の存亡がかかっているのに、誰もその直接的な費用の支払いを拒否しているからだ。その打開策は、国連に温暖化防止基金を設け、各国政府が「温暖税(炭素利用税)」を大企業を中心に課して得た財政資金を拠出金に充てるという方法があるかもしれない。
  この観測が、むしろ誤っていることを、私は望んでいる。

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