《陰謀》の解剖学 目次
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謀略とサヴァイヴァル

  ところが、ペンタゴンの闇組織は訪米中のエティオピアの大司教を暗殺しようと計画した。
  大司教は祖国の辺境の村民虐殺事件について調査や告発を進めようとしていたのだ。大司教は状況証拠をつかんでアメリカ大統領に事件の調査を申し入れるはずだったのではないか。
  郡の闇組織は、あの謀略事件が公になってはまずいので、大司教を抹殺しようとした。しかも、その容疑をボブになすりつけたうえに、謀略の生き証人でもあるボブを罠にはめて葬りさるつもりだった。新たな謀略が動き始めた。
  闇の軍組織としては、軍に失望して「負け犬」となり山奥にくすぶっているボブをいたぶって抹殺しようという腹積もりだった。

  ある日、隠遁生活を送るボブのところに、エティオピアの作戦でも指揮官だったジョンスン大佐がやって来て、遊説を予定している大統領暗殺計画があるらしいので、遊説予定地で狙撃可能なポイントを割り出し、対抗策を立案してくれと頼んだ。
  大統領に対する狙撃の最適ポジションの割り出しということで、じつは大統領の隣に立つはずの大司教を狙撃するために最適の位置取りと狙撃情報を得るのが目的だった。
  ボブには狙撃阻止のためのアドヴァイザーの役割をあてがった振りをして、狙撃遂行後、暗殺犯として射殺するつもりだった。彼らは地元の警察官やら警護スタッフを買収して、ボブを容疑者として抹殺する手はずだった。


  当日、アドヴァイザーとしてのボブは、大統領と大司教が並んで立つ演壇を見張りながら、風速や温度、湿度などを分析した情報をスタッフに伝えた。ところが、その情報は、コンピュータ制御で長射程狙撃用狙撃をおこなう自動機関銃アソールト・マシーンに送られていた。その銃は、狙撃地点となっている古い鐘楼に設置されていた。照準は大司教に合わせられていた。
  そして銃は火を噴き大司教は殺された。しかし、警護スタッフには何者かが大統領の狙撃に失敗して大司教を撃ってしまったという偽情報が提供され、狙撃に必要な情報を送っていたボブが首謀者とされた。ボブの近くにいた――買収された――警察官が銃でボブを狙ったが、急所を外したため、ボブは逃走した。ボブは指名手配され、捕縛のための分厚い包囲網が敷かれた。

  だが、サヴァイヴァル能力抜群のボブは、どうにか危地を逃れて反撃に出る。「傷ついた負け犬」のはずが、復讐をめざす手負いの狼だった。しかも、ボブの追跡で「ドジを踏んだ」ことから左遷されていたFBIの若手捜査官がボブの味方=助手となった。彼は名誉挽回の意欲に燃えていたところに、ボブから罠にはめられたことを知ったため殺されそうになったことから、ボブと共闘することになった。
  この後の物語の展開は、このサイトの別の記事にあるので、これ以上は触れない。

  この物語のプロットで秀逸な点は、軍の狙撃システムの仕組みや、ペンタゴンが完全にコンピュータ制御で作動する極大射程――射程1000メートルを超える――の自動機関銃で風速風向、湿度・温度などを読み込んで狙撃をおこなう自動システムについて教えてくれることだ。そして、狙撃兵のサヴァイヴァル能力についても。
  ところが、この暗殺劇で失敗の原因は、謀略を複雑化、大規模化しすぎたことだ。ボブを欺瞞し葬るために、やたらに大がかりで複雑な策を弄しすぎた。暗殺のプロットはできる限り単純に、というのがこの手の謀略の要諦らしい。それに逆らって失敗した物語ということになる。

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