レナードの朝 目次
33年後の目覚め
原題と原作
見どころ
あらすじ
珍奇な臨床医の誕生
患者たちの奇妙な反応
レナードとの出会い
《Lドーパ》投薬治療
  Lドーパ投与の学会報告
  レナードの投薬治験
快挙に沸く病院
スポンサーの説得
レナードの自立心と反抗
  身体の自立と精神の自立
  反抗と病院の秩序
治療効果の消滅
  パイロットケイス
  Lドーパ投与治療の限界
私の経験に即して
身障者の介助活動
その一歩が踏み出せる幸せ!
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ドクター
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快挙に沸く病院

  しばらくして、病院のレストランでのこと。
  看護婦たちといっしょに円テイブルで朝食をとるレナードは注目の的。病院中の医師と看護婦が回復したレナードを見にきた。レストランに来た誰もが、レナードを話題にしている。「やあ、見たかい、レナードを…」と。
  そのレナードは、茹でたトウモロコシを丸かじりしている。30年ぶりに自分の手で食べる食事で、すごい食欲だ。自分の手で食べるという経験を楽しんでいるのかもしれない。
  近くのテイブルでセイヤーといっしょに朝食をとっていたエレノアが、溜息とも感激ともつかない表情で言った。
「人生から30年間がすっかり抜け落ちるなんて、考えられます?」

  しばらくしてセイヤーは、レナードに体を動かす訓練をさせ始めた。黒板に字を書かせたり、歩いたり…、そして直立できたレナードをポラロイドカメラで撮影した。
  というわけで、レナードにとっては、麻痺と硬直から回復したばかりにしては忙しい日になった。セイヤーは、疲れをためないようにするため、レナードをかなり早めに就寝させた。なにしろ、30年近くも使っていない身体中の筋肉を使わせたのだ。

  だが、ベッドに横たわったレナードは、眠りに就くことが怖い様子だった。
「眠って目が覚めたら、またふたたび…、ぼくは怖い」と、なかなか目を閉じなかった。
「目が覚めたら、翌朝だよ。大丈夫、今日と同じように動けるさ。ほら、安心して眠りなさい」とセイヤーはなだめた。
  母親がレナードの手を握ってくれて、子供の頃の子守歌を歌ってあげると、レナードは寝息を立て始めた。
  翌朝、レナードはリハビリ療法士のアンソニーらとともに食事をとることができた。これはビッグニュウズだった。


  レナードへのLドーパ投与治療が成功したことから、セイヤーは自分の病棟の患者すべてに同じ投薬治療を施すべきだと考えた。そこで、ある日病院の食堂で、医科長のカウフマンに、麻痺患者全員にドーパミンを投与したいと申し出た。
  だが、カウフマンは即座にはねつけた。理由は、Lドーパは非常に高価な薬だったからだ。
「いったい、どれくらい費用がかかると思っているんだ」と。
  セイヤーは、すでに投薬費用を見積計算していた。
「1万2000ドルかかります」
「そんな大金がどこから出てくるんだ。病院への出資者(寄付者)たちだって、そんな出費は認めないぞ」
「いや、レナードの治療の成功例を出資者たちに説明します。そうすれば、この投薬治療の意義を認めるでしょう」
「ばかな、認めるはずがない!」
  議論はセイヤーにとって決定的に不利だった。

  ところが、食堂でその論争を聞いていた病院のスタッフたち(医師、看護婦、療法士など)は、ポケットから自分の小切手帳をテイブルの上に出して金額を記入し始めた。この投薬治療のために、病院に寄付しようというのだ。
  彼らは、食堂を出る前に、セイヤーとカウフマンが向かい合っているテイブルの上に、次々と寄付金=小切手を置いていった。またたくまに、何枚もの小切手が集まった。驚くカウフマン。
  新治療法を多くの患者に適用するために、出資者への説得に挑戦する価値はある。そう実感したセイヤーは、出資者たちへの説明会の企画を練り始めた。

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