レナードの朝 目次
33年後の目覚め
原題と原作
見どころ
あらすじ
珍奇な臨床医の誕生
患者たちの奇妙な反応
レナードとの出会い
《Lドーパ》投薬治療
  Lドーパ投与の学会報告
  レナードの投薬治験
快挙に沸く病院
スポンサーの説得
レナードの自立心と反抗
  身体の自立と精神の自立
  反抗と病院の秩序
治療効果の消滅
  パイロットケイス
  Lドーパ投与治療の限界
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33年後の目覚め

  1920年代の欧米では奇妙な脳炎が流行した。回復後に身体麻痺や昏睡に陥ってしまうのだ。そのおよそ30年後、脳内神経伝達物質ドーパミンの一種を投与して回復させる治療法が開発された。
  ところが投薬治療の効果は長続きしなかった。そういう史実の治療記録(1973年)をもとにしてつくられたドラマ映画作品が『レナードの朝』(1990年)だ。
  主人公は脳神経病理医師とその男性患者。治療法を開発した医師は男性患者に新薬を投与して33年後に昏睡から目覚めさせた。そして同じ治療法を多くの患者に試みた。一見成功したかに見えたが、その後、思わぬ事態の成り行きとなった。

原題と原作について

  原題は Awakening で日本語のすると、「目覚め、覚醒/麻痺や昏睡からの回復/社会性への目覚め」というような意味になる。
  映画作品の脚本の資料となった原作は、 Oliver Sacks, Awakening, 1973 。神経科医師だったオリヴァー・サックスの臨床治療の症例研究書だ。
  サックスはイングランドのミドゥルセクスの大学病院の研修医だったが、アメリカ合衆国西海岸に移住して医学研修(UCLA)を修了し、その後東部の有力な大学病院に勤務しながら脳神経医学で高い業績を残したという。

見どころ
  主人公の医師の人物像はかなり脚色されているが、実話にもとづく物語だという。
  優秀な生物病理学者のセイヤーは、一般の人びととのコミュニケイションがひどく苦手だった。だから、患者との接触を前提とする臨床医にはまったく不向きだったが、偶然、病院の神経科臨床医として採用された。その結果、嗜眠性脳炎患者の後遺症である身体麻痺や昏睡の治療実験を始めることになった。
  そして、30年前に身体麻痺に陥ってしまったレナード・ロウと出会うことになった。セイヤーは、ある研究報告会で、神経伝達物質ドーパミンを主成分とする治療薬を集中的に投与して、身体麻痺や昏睡を治療する方法を思いついた。新たな治療法をレナードに施してみた。
  この治療法によって、レナードの麻痺は急速に回復して、ほぼ日常生活が可能な間際まで治癒した。ほかの患者も著しい回復を見せた。
  だが、この回復は長期間持続しなかった。患者たちは、ふたたび麻痺や昏睡状態に戻っていった。

  一般社会の健常者との付き合いには、恐怖を感じて萎縮してしまうセイヤーだが、患者とのコミュニケイション能力は抜群に高かった。セイヤーは患者のために努力し社会的な役割を果たしていくことで、彼自身の社会心理的な病理を克服していく。
  それゆえ、映画の原題の「アウェイクニング=目覚め」の意味するところは、患者たちの麻痺や昏睡からの回復・覚醒だけでなく、セイヤー医師自身の社会性の回復・目覚めを意味するのかもしれない。

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