ついにフォイルは一連の事件の思想をつかみ、ついにローレンス殺害の真犯人に迫ることになった。
警視正はガスコイン家を訪ねて、ローレンスの妻エミリーを夫の殺害犯として拘束した。
エミリーはすでに覚悟を決めていたようで、フォイルに問われるままに、理路整然と夫殺害にいたる経緯を語った。
一連の事件の発端は、レイ・ブルックスが息子の良心的兵役拒否の申し立てをローレンスに認めてもらうように2000ポンドを渡して買収したことだった。
プライドの高い権威主義者のガスコイン判事が賄賂を受け取ったのは、財政的に窮していたからだ。収入に不相応な広大な屋敷を維持するためにすっかり財産を使い果たしてしまったからだ。
彼自身は邸宅を維持するために多額の出費を続ける生活は嫌だった。だが、名門としての誇りを守りたいという妻の要望には逆らえなかったのだ。
しかも、現金受け取りの現場をジョウに見られてしまい、ノートに記録されてしまった。
だが、それだけなら、変人のジョウが「たわごと」を書きつけたノートにすぎなかった。名門家門の判事ガスコインは、奇矯な学童に虚言壁があると主張すれば通っただろう。
ところが、兵役拒否申し立てを却下されたデイヴィッド・ビールが監房内で自殺した。そして、警察のなかでも能力抜群のフォイルたちが厳格に捜査を開始し、ガスコイン判事の周囲を調べ始めた。彼らなら、ジョウの言い分をきっかけにして真相をつかむ恐れがある。
ジョウの存在に脅威を感じたガスコインは、ジョウを殺すことにしたが、自分に容疑が向かないように、まずレンガに巻いた脅迫状投げ込み事件を自作自演した。ガスコイン自身が殺意を抱い何者かの標的であって、ジョウは誤って殺されたと判断されるような状況設定を試みたのだ。
そうしてから、義勇国防隊が保有する手榴弾を持ち出して、離れ屋のドアを引くとそのピンが外れて、室内に入った者が爆死する仕かけを準備した。
そして、ジョウの目の前で怪しげな荷物が離れ屋に届けられた電話があったことを聞こえよがしに語り、不審な荷物を少年に印象づけた。少年は、ガスコイン家の面々の目を盗んで離れ屋に忍び込んで、爆発に巻き込まれた。
ところが、ローレンスの妻エミリーは、脅迫状事件の夜以来の夫の不審な行動を気にかけていたところに、ジョウの爆死事件が起きた。エミリーはローレンスを疑って執拗に問いかけた。
その結果、ローレンスはブルックスに買収される場面をジョウに見られてしまったことが原因で、少年を殺害したことを認めた。
気位の高いエミリーは、夫を執拗になじった。
ローレンスは反論した。
「それもこれも、すべてお前のせいだ。
お前が望むように、収入に不相応なこんな邸宅を維持するために、わが家の資産はほとんど使い果たしてしまった。
賄賂を受け取ったのは、この屋敷を維持するためだ。愚か者め!」
これ以上ないほどに自尊心を傷つけられたエミリーは、夫の机から拳銃を持ち出してきて至近距離から夫を狙い撃ちした。数発の銃弾を受けて、ローレンスは絶命したのだ。