サマンサが確保した伝票書類は、燃料横領の手口を解明する決定的な証拠となった。真相はこうだった。
ベネットの会社でフランク・ガノンと結託していたのはパメラだった。
ガノンは近いうちに盗み出す燃料の目標量をパメラに伝える。管理局からの配給指示伝票が届くと、パメラは本物の伝票と偽造伝票を取り換える。偽伝票には、本来の総配給量にガノンの要求分が上乗せしてある。
こうして、トラックのタンクには実際に必要な量を超えた燃料が積み込まれる。一方、個々の配給先への売り渡し量はもとのままなので、その日の配給が終わった時点で、上乗せ分が余る。
そのあとは、コニーがトラックを人目のない森などに走らせて、そこで燃料の移し替えをおこなうというわけだ。
このような犯罪にパメラを走らせた動機はどういうものだったのか。
それは、夫のマイケルへの反感と面当てだった。
マイケルは会社の経理事務員としてパメラを働かせながら、しかるべき給料も支払わなかった。もちろん、会社の利益の分配もしなかった。そのうえに、妻を女性としてあつかわず、暴君のようにこき使うだけだった。
その一方で、マイケルは鼻の下を伸ばしながら従業員の若い女性たちに接していた。
そういう屈辱を晴らすために、パメラは犯罪に加担して留飲を下げていたのだ。自分を軽んずる夫の裏をかくことで。
妻のパメラが燃料横領に加担していたため、マイケルは経営者としての責任を問われ、管理局から業者としての指定を取り消された上に、これまでの損害を賠償するために多額の過料を支払わされて、破産状態に陥った。
マイケルは、軽んじてきた妻から痛烈なしっぺ返しを受けたことになる。