ゴールィキーパーク 目次
政治体制と職業意識
原題について
見どころ
あらすじ
旧ソ連での刑事政策(犯罪理論)の変遷
  古典的刑法理論
  マルクシズムからの批判
  ソ連の古典的犯罪理論
  抑圧体制と政治犯罪
公園の惨殺死体
捜査線上に浮かんだ面々
検死解剖
女性の顔面の修復
事件捜査への闖入者
イリーナとアルカーディ
3人の被害者
ゴロドキンの悲劇
イリーナの危機
闇のネットワーク
最終決着
  
◆ゴールィキーパークへのオマージュ◆
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あらすじ

  1970年代末のソ連、ある年の冬、モスクワ郊外のゴールィキーパーク(公園)で惨殺された3つの遺体が発見され、刑事警察による犯罪捜査が始まった。殺人事件の捜査を担当したのは、モスクワ警察のアルカーディ・レンコ。彼は警察権力の側の人間だが、共産党の支配には辟易していた。
  捜査線上には何人かの容疑者ないし関係者が浮かび上がった。そして、抑圧的なレジームのもとで苦悩する人びとのさまざまな「生き様」が浮かび上がってきた。捜査のなかでレンコは、ある美しい女性に出会った。彼女は「自由を求める心」がひときわ強いがために、当局から圧迫され、人生を押し潰されそうになっていた。
  彼女は西側への亡命を望むがゆえに巻き込まれた事件――殺人事件と絡んでいた――には、西側の富裕商人と結託した国家機関が深くかかわっていた。
  さて、ゴールィキー公園での3人惨殺の有力容疑者として、アメリカ人貿易商のオズボーンが浮かび上がった。彼の足跡を追うことで、アルカーディは真相に向かって一歩一歩近づいていく。
  容疑者特定のためには、イリーナの証言が不可欠の証拠となるはずだった。だが、亡命を強く求めるイリーナは、秘密のの亡命ルートを握るオズボーンに縋り付こうとしていた。警察への協力を拒否する。
  ところが一方、金儲け競争でどんな卑劣な手をもつかうオズボーンは、証人としてのイリーナを葬り去ろうとして、KGBや司法機関の幹部を買収して手ごまとして動かし始めた。KGBや司法部幹部はレンコの捜査を執拗に妨害する。
  レンコはイリーナの身を守ろうと願いながらも、事件の真相解明と容疑者逮捕のために命がけで奔走する。

旧ソ連での刑事政策(犯罪理論)の変遷

  さて、物語に入る前にソヴィエトにおける犯罪ならびに刑事法思想について説明しておく。
  旧ソ連では、革命後長らく、自称「マルクス主義的犯罪理論」が犯罪=刑事政策の教条となっていた。それが、ソヴィエト的ないし「社会主義的適法性」のドグマと結びついていた。それが共産党独裁や国家権威主義と結びついて、すこぶる非科学的な刑事捜査や司法運営をもたらしていた。
  つまるところ、市民社会の代表でありその政治的総括者である国家(司法装置)が犯罪をどのようなものと見なし、どのように対応するべきかという思想に裏打ちされて、警察などの司法機関の動きの原理原則がつくられるわけだ。
  一般に犯罪とは、他者の身体・生命、財産そのほかの権利を目的意識的に侵害・破壊する行為であって、特定の個人や集団による「市民社会の正常な秩序」の意図的な侵犯である。国家(政府)はそのような逸脱行為を抑止し、侵犯者を罰し市民社会から排除することによって、秩序の撹乱を回復しなければならない。
  こういう現象にについて、ソ連では独特の解釈と味付けがされ、刑事司法の運動原則が描かれていたのだ。
  以下の説明では、論理をかなり乱暴に大雑把にしてある。

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