ゴールィキーパーク 目次
政治体制と職業意識
原題について
見どころ
あらすじ
旧ソ連での刑事政策(犯罪理論)の変遷
  古典的刑法理論
  マルクシズムからの批判
  ソ連の古典的犯罪理論
  抑圧体制と政治犯罪
公園の惨殺死体
捜査線上に浮かんだ面々
検死解剖
女性の顔面の修復
事件捜査への闖入者
イリーナとアルカーディ
3人の被害者
ゴロドキンの悲劇
イリーナの危機
闇のネットワーク
最終決着
  
◆ゴールィキーパークへのオマージュ◆
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最終決着

  オズボーンのクロテン密輸出、それに絡んだゴールィキー公園での殺人、イアムスコイとのコネクションなどの事案の真相は、こうしてKGBと当局の知るところとなった。アルカーディの入院治療のあいだに、KGBと当局の方針が決定されていた。
 アルカーディが回復したときを見計らって、KGBからの提案が示された。提案ではあるが、アルカーディが拒否する余地はなかった。イリーナの生命の保証と亡命の黙認が条件だったからだ。拒否すれば、2人ともよくて流刑、悪ければ処刑となるしかなかった。
 提案の中身はというと、
 ストックホルムにKGBとともに出向いてオズボーンと決着をつけ、彼が盗み出して密かに飼育しているクロテン(6頭)を処分する、というものだった。KGBはプルィブルーダの指揮下に3人がアルカーディとイリーナに同行した。

■惨殺されたウィリアム・カーウィル■
 アルカーディとイリーナは、KGBティームとともに航空便でスウェーデンに赴いた。空港から車でストックホルム郊外の飼育場に向かった。飼育場は森林に囲まれた牧場のような場所だった。
 アルカーディが牧場に入っていくと、入り口近くにある樹にカーウィルの死体が縛りつけられていた。腹が引き裂かれて内臓が引き出されていた。アルカーディは、彼に弟の殺害犯はオズボーンだと告げていたので、復讐のためにやって来たのだが、返り討ちになってしまったようだ。アルカーディが死体に近づくと、オズボーンが現れた。照準スコウプつきのライフルを手にしていた。
「私の愛犬を殺しやがった。だから、殺してやったのさ」とうそぶいた。そして、カーウィルとKGBティームに買収の提案をした。
「この事業の仲間になれよ。生きたクロテン1頭で1億ドルにはなる。子孫を殖やすからな。毎年、懐に大金が転がり込むぞ」と。
 だが、愛国心に燃えるプルィブルーダは反論した。
「クロテンを返却しろ。そうすれば、そのほかの事件は大目に見てもいい」
 言い合いはやがて銃撃戦に発展した。


■銃撃戦■
 アルカーディはイリーナを連れて林のなかに逃げ込んだ。そのあいだに、KGBはプルィブルーダと部下2人が射殺されてしまった。オズボーンは、林のなかのアルカーディとイリーナを狙い始めた。
 アルカーディは、イリーナを安全そうな隠れ場所に残して、林のなかを移動しオズボーンの後方に回り込もうとした。しかし、オズボーンは照準スコウプでアルカーディの動きを追いかけているようで、アルカーディが移動する方向に向けて撃ち込んできた。
 すると、生き残っているKGBエイジェントが厩舎の陰からオズボーンに発砲した。が、撃ち倒されてしまった。アルカーディもまた厩舎のなかに逃げ込んだ。そこにはケイジが並んでいた。6つのケイジのなかには、クロテンが1頭ずつ閉じ込められていた。そこにも、オズボーンは撃ち込んできた。
 アルカーディは逃げ回って、倒れているKGB要員の手から銃を抜き取った。だが、射撃の腕はオズボーンの方が圧倒的に上だった。それでも、アルカーディは撃ち返した。

 そのとき、オズボーンは近づいてきたイリーナを見つけて、アルカーディに、「イリーナを撃たれたくなければ出て来い」と叫んだ。アルカーディが出ていこうとすると、銃を隠し持っていたイリーナが至近距離からオズボーンを銃撃した。倒れたオズボーンの身体に、さらに銃弾を打ち込み続けた。
 こうして、イリーナとアルカーディのほかは全員殺されてしまった。
 そこで、イリーナは「このまま2人で亡命しましょう。どこまでも逃げましょう」と言い出した。
 だが、アルカーディは断った。 「君だけ逃げろ。亡命の件はKGBと取引ができている。だが、私はクロテンを殺してから戻る約束だ。さもないと、KGBは世界中どこまでも追いかけて、私たち2人を殺すだろう。
 イリーナ、私はいつまでも君を愛し続ける。君の命の保証は、私が戻って報告することなんだ。だから、今は1人で逃げてくれ。君は自由な社会で生きることができる人間だ。だが、私はいまだにソ連人なんだ。自由な世界では生きられない」
 イリーナは仕方なく、泣きながら1人で逃げることにした。

 アルカーディは、クロテンのケイジに向かった。だが、彼はクロテンを殺さずに、ケイジから逃がした。ソ連のレジームに捉われたままで逃げ出せない自分に代わって、クロテンを自由の森に解放することにしたのだ。自由を求めて森に逃げ込んでいったクロテンを見つめるレンコ。彼は政治体制の檻のなかへ戻るのだ。
 オズボーンの死体の足元にはクロテンの6頭分の毛皮が残されていた。その毛皮を、クロテンを6頭処分したことの証拠することにした。
 翌日、モスクワに戻ったアルカーディは検事総局長のもとに出頭して報告した。オズボーンを射殺して、クロテンも処分した、と。

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